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2012.6.8
【CX-5のデザインができるまで #8】カラーデザイナー岡村さん

この記事は、過去Facebookに掲載した記事です。

「CX-5のデザインができるまで」

第8回目はカラーデザイナー岡村さんに、「プロセス7:カラー・素材を決める」について話を聞きました。

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0.1秒での勝負に挑むカラーデザイナーの仕事

ク ルマのデザインプロセスの中では、カラーや素材を決めるのが最後になるという印象がありますが、実際はクルマのデザイン開発の初期段階からスタートしてい ます。何から始めるかというと、市場の分析や調査をしてトレンドといったところを把握し、そこからカラーとマテリアルのコンセプトをイメージづけて作って いきます。
商品を見た時、最初に飛び込んでくる色の印象って強いですよね。それは、人間の視覚から入る情報が全体の8割を占めていて、なか でも色というのは形を把握する前、0.1秒か0.2秒で認識されてしまうからです。だから、まずどういう印象を持たせたいかというコンセプトを考えます。 それは色のコンセプトであり、マテリアルのコンセプトであると同時にクルマそのもののイメージを決めるコンセプトでもあります。
完成したクルマを世の中に送り出す時も、色の名前には「こういう印象をイメージしていますよ」という思いを伝えて、お客様とのコミュニケーションに活かしてもらっています。

カラー開発の仕事はマーケティングでもあり、デザインでもある

カ ラー開発の初期段階は、デザインの領域というよりはマーケティングの領域になります。マーケットを知らずに開発をしてしまうと間違った方向にいってしまっ たり、思い込みだけで進んでしまう。色は好き嫌いがハッキリしがちなので、かなり客観的な眼を持っていないといけません。

ただ実際の作り込 みに入っていくと、自分たちの思いやアイディア、コンセプトをいかに表現していくかというところにフォーカスしてカラー開発をしていっていますね。今回の 「ジールレッドマイカ」の場合、デザインテーマ「魂動」自体が「強くて美しく、生命感あふれるデザイン」と謳っていますので、そこをしっかり表現したいと 思いました。また「スカイブルー」は、CX-5が初めてSKYACTIV TECHNOLOGYを全面的に採用したクルマだったので、そこをイメージさせることを意識しています。

色には「昼の顔」と「夜の顔」がある

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CX-5のローンチカラー、新色の「ジールレッドマイカ」は、環境によってものすごく印象が変化する色です。ディーラーの店内に置いてあるクル マを見て「あんな色なんだ」と思いますよね。それが、晴れた日に外で見ると「あれ、こんな色だっけ?」って思うんです。さらに夜、街灯が点っているところ を走っているとまた違う印象になります。昼の顔と夜の顔が違う(笑)。

塗料には光が当たると一番明るく見えるハイライトと、影になっている シェードの2つあって、その2つがメリハリを作っていますが、「ジールレッドマイカ」は、ハイライトは鮮やかさを高めて、シェードに深みと透明感を持たせ ています。例えばスカッと晴れた日に見ると、太陽の光でハイライトの輝きが最初に飛び込んでくるので、すごく鮮やかな色の印象を与えますが、夜の街中を 走っていると、シェードの深みや透明感が際立ってくるので大人っぽい印象に見えます。
そういう二面性があるのが、「ジールレッドマイカ」の特徴だと思います。

ただ力強いだけのSUVではないCX-5をデザインする

「魂 動」デザインの持っているダイナミックな力強さと、SUVとしてCX-5の持つ力強さには、共通している点があったので、ダイナミックで力強い表現にしよ うというイメージはありましたが、ただ、CX-5はSUVだけど「オフロードをガンガン走る」という力強さではないと思うんですよね。女性が街で乗ってい てもカッコイイ、そういう色気だったり、遊び心のようなものを付け加えていきたい。ダイナミックな動きのある「魂動」のなかに、品格のある遊び心を出して いくところが難しかった点ですね。

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そこで工夫したのが、マテリアルの領域。特に内装はこだわって作りこんでいきました。具体的には、革シートのボルスターという端っこの部分。ここはダブルス テッチといって並行した2本のステッチを走らせていますが、2本とも同じ色であることが普通なんですよ。赤なら赤2本ですが、そうするとちょっと暑苦しい 印象になる。かといって2本ともシルバーやグレイだと、スポーティーだけど味気ない感じがする。内側と外側で色を変えるということで、洒落っ気もありつ つ、エモーショナルな雰囲気やスポーティーさも表現できるんです。だから、かなり無理矢理、提案をねじ込みました。このクルマは、こういうものすごい小さ なこだわりが多すぎて、気づきにくいかもしれないんですけどね(笑)。

布地もそうですが、マツダは織物にこだわっていて、ほとんどの車種が 織物を使っています。織物は糸もたくさん使うのでコストが上がりますが、その分、質感が高くなるんですよね。CX-5の織物は、縦と横に織られているのが 分からないぐらい、ギュッと緻密に織るというところにこだわりました。織り目が目立つと粗い感じがしますが、密に詰まっていると質感が高まりますし、収縮 させた素材に、エンボスという型でプレッシャーをかけて凹凸感を出すことで、力強さと遊び心、品格と色気、そのどちらも醸し出すことができます。凹凸によ り、マットでツヤのない部分とキラっと光るグロスの部分が混在しているので、晴れた日にドアを開けた瞬間、シートがキラキラと光ってすごくキレイだと思い ます。

余談ですが、今回嬉しかったのが、シートモデルの縫製作業をしてくれている女性から「今回の布は、今までのとちょっと違うね。」と言ってくれたこと。そう感じてくれたことに、ちょっとニヤリとなりましたね。

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カラーデザイナーは、普段の生活からインスピレーションを得る

個 人的な意見ですが、普段の生活の中で、いろんなことに目を留めて「これって、なんだろう」と思う好奇心が身についている人はカラーデザイナーに向いている かもしれないですね。例えば旅行に行った時、「この街の風景って、こんな色のイメージだよな。」とか「布に喩えると、こんな印象の布になるのかな。」と か、自分の中で印象を分解したり、色や布に置き換えたり。
気温や湿度、建物の素材の質感といった、その風景の持つ空気感からインスピレーションを得ています。そんな普段のちょっとした気づきが、実際になにか提案する時に役立つことが多いですね。
だから、街中を歩いていても、いろいろなものが気になったりするんですよ。

次回はいよいよ最終回、CX-5チーフデザイナー中山さんが再登場です。

お楽しみに!

カテゴリー:クルマ , マツダの人