MAZDA公式ブログ
2014.10.17
【マツダの匠】 クレイモデラーの情熱に迫る(後編)

マツダの車づくりに息づく伝統、主義、思想、そして技能。それらを受け継ぐ匠の志や情熱をご紹介する『マツダの匠』。前回は、コンマ数ミリの技術でクレイモデラーとして活躍する野﨑 亮介(のざき りょうすけ)さんの仕事とその素顔に迫りました。

後編では、その野﨑さんが未来の匠として期待をかける若手クレイモデラー、小野 亮圭(おの りょうけい)さんの仕事への想いとチャンレンジをご紹介します。

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SHINARIが入社の動機

「教わる前に見て学べ」「聞く前に自分で考えろ」。

マツダのクレイモデラーに脈々と受け継がれている、仕事に対する姿勢です。なぜならば、他人とは違うものを発想して生み出すことは、決して人に教わってできることではないから。

そんな環境で活躍してきた野﨑さんが「将来有望」と評価する後輩が、クレイモデラーになって3年目の小野さんです。

ところどころに粘土のこびりついたジーンズと靴が、修行中の職人らしさをかもし出している小野さん。学生時代、野﨑さんの手がけたデザインコンセプトモデル『SHINARI(靭)』を見て大きく感動し、車業界を志望しました。今、その野﨑さんと同じ職場で先輩後輩の間柄となっているのも、何かの縁かもしれません。

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(デザインコンセプトモデル『SHINARI(靭)』)

 

入社後の戸惑いと課題

入社直後は「道具の使い方も分からなかった」と語る小野さん。基本的な技術を訓練しながら先輩たちのサポートを続け、少しずつサイドミラーやドアハンドルといった細かなパーツから造形を任されるようになります。入社前はデザイナーのスケッチからすぐにクレイモデルが完成すると思い込んでいましたが、多くの人と意見を交えながら細かな調整を重ねて造形していく実際の現場に戸惑いもありました。

当時を振り返って、小野さんは「デザイナーの意図も分からず造形していた」と省みます。最初に作ったものに対して意見されると、それを言われたままに直していたのが当初の小野さんでした。

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入社二年目でかかわった『HAZUMI』

そんな小野さんを大きくステップアップさせたのが、コンセプトモデルである『HAZUMI(跳)』への参加でした。9月に予約販売が開始された新型『デミオ』にもそのデザインエッセンスが受け継がれている『HAZUMI』は、マツダの『魂動デザイン』をコンパクトな車体にギュッと濃縮したスピード感あふれるスタイリングが魅力。小野さんはこの『HAZUMI』のヘッドライト周りの造形と全体のサポートを担当しています。

入社2年目でのコンセプトモデルへの参加は、小野さんにとって非常に嬉しい抜擢でした。その時のことを小野さんは「光栄に感じ、緊張とやりがいを持って仕事に向かった」と語ります。ジュネーブで発表された際にはその反応が気になって仕方がなく、ネット上を色々見て回ったとか。

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(デザインコンセプトモデル『HAZUMI(跳)』)

 

『HAZUMI』をきっかけに大きくステップアップ

『HAZUMI』の躍動感あるスタイリングは複雑な線と面で構成されています。その想像以上の複雑さに、小野さんは当初「削り方が分からなかった」ほど戸惑ったそうで、自分で納得したものにも何度もダメ出しをもらってはやり直しの連続でした。

『HAZUMI』の開発での小野さんの担当は、ヘッドライト。もっとも気を使ったポイントは「車全体の持つ前進感や重量軸に対し、シグネチャーウイングからヘッドライトまでの造形が車全体のベクトルに対し外れないこと」だったとか。そのために、車全体を見ながら、どの角度から見ても安定した線と面を描くことに注力したそうです。

『HAZUMI』の開発を振り返り、小野さんは力強くこう語りました。

「たとえ小さな部品であっても車全体と調和のとれる線と面を強く意識しながら造らなくてはならない。そのためには常に視野を広げ、そのクルマの持つテーマ性を理解したうえで構成する線や面に細心の注意を払い、造形していかなければならないと学びました。」

そしてまた、技術だけでなく、デザイナーの意図をくむことの重要性も強く再認識することになりました。車のデザインには多くのデザイナーがかかわります。当然、一人ひとり言葉は違いますから、それぞれの意見を自分の中で集約し、その真意を形にしていかなければなりません。こうした試行錯誤の連続が小野さんを大きく成長させる糧となったのです。

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クレイモデラーに求められる立体提案力

最初の頃は、分からないことがあるとすぐに先輩に質問ばかりしていて、「自分で考えろ」とたしなめられたと苦笑いする小野さん。しかし先輩クレイモデラーの野﨑さんは、そんな小野さんのクレイモデラーとしての資質に最初から目をかけていました。

マツダデザインにおいてクレイモデラーとは、デザイナーの描くスケッチを超える立体提案が求められる職種。クレイモデラーは作業者ではなく創造者の一員として、デザイナーの真の意図をくみ取り、それを単に具現化するだけでなく、常に最適と判断すれば他の選択肢も立体で提示していかなければなりません。

大きな志に向けて、デザイナーとクレイモデラーが真剣に議論し、時に衝突する。それが許される風土こそが、魂動デザインを生み出しているのです。

そういう環境にあって、小野さんの仕事は「言われたことをこなすだけではなく、自分の意思を持ち、造り上げるカタチに気持ちがしっかりと込められている」と野﨑さんは評価します。小野さん自身、以前と比べると自分の感性に少しずつ自信を持ちはじめたところ。仕事の姿勢も、しっかりと自分なりの考えが柱としてあり、他の意見を取り入れながらそれをブラッシュアップしていくというスタンスに変わりつつあります。

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(右:削る面に合わせて道具を慎重に選定する)

 

周囲を驚かせる車を

小野さんは最近になってデザイナーから褒められることも増えてきました。これからは先輩デザイナーに対しても、造形の理由など伝えるべき意図をもっと的確に伝えられるように、自分の仕事に対して信念を持つことを目標に据えます。

そして先輩である野﨑さんの手がけた『SHINARI』を見て心を奪われた時と同じように、人の心に大きく響く車を世に出して、周囲をあっと言わせるのが将来の夢。こうして、情熱の具現化とも言える車づくりを通じて、マツダのクレイモデラーの系譜が受け継がれていくのです。

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「人の心を強く揺り動かす美しいものを追求したい」
ドライバーとクルマの関係を、まるで愛馬と心を通わせるかのように、エモーショナルなものにする。そのための造形を追い求めつづけるのが、マツダの「魂動デザイン」です。

クルマに命を与える
This is Mazda Design.
http://www.mazda.co.jp/beadriver/design/

今回ご紹介した「マツダの匠、クレイモデラーの情熱に迫る」の前編はこちら
デザインコンセプ トモデル「SHINARI(靭)」をはじめ、数多くのクレイモデルを担当してきたチーフモデラーの野﨑さんが、デザイナーとクレイモデラーが対等の関係でデザインを磨き上げるマツダ独自のスタイルや、脈々と受け継がれてきた「技と志」について、語っています。

カテゴリー:デザイン