MAZDA公式ブログ
2016.6.21
【知られざる技術】クルマは「走るコンピュータ」?!さまざまな電子機器を支える技術とは。

この、映画の特撮スタジオのような風景。いったい何をする施設でしょうか?

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ここは「電波暗室」といって、内外の電波の行き来を一切遮断することができる施設。今回は、クルマづくりにおいて、この電波暗室がどう役立てられているかにせまります。

 

電波暗室の役割

ここは、電波暗室を中心とした「電波実験棟」。

どんなことが行われているのか、車両開発本部の網本 德茂(あみもと のりしげ)と、島田 信行(しまだ のぶゆき)に聞きました。

「ここでは電波がクルマに与える影響、そしてクルマから発生する電波の強さについて検証しています。

私たちの身の回りには、テレビやラジオの放送、携帯電話など、たくさんの電波が飛び交っています。だから、再現性のある正確な検証を行うには、全ての電波を遮断する施設が不可欠なのです。」

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(写真 左:電波を扱って30年のエキスパートとして全体を統括する網本)
(写真 右:パワートレインの電装品信頼性開発を担当する島田)

 

なぜ電波について検証する必要があるのでしょう?

実は私たちが想像する以上に、クルマにとって電波の存在は、影響が大きいのです。

携帯電話が普及し始めた頃、着信の際に、カーラジオに雑音が入ることがありました。これは携帯電話の電波がラジオという電子機器にノイズとなって影響を与えていたからです。
ノイズというのは、電子機器の回路内に発生する想定外の電流のこと。電波は電磁波の一種ですから、金属が電波を受けると電流が発生し、それがノイズとなるのです。

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(写真 左:電波暗室の天井・壁面は電波吸収材で覆われる)
(写真 右:実験中は電波や人の出入りも遮断し、温度まで厳格に管理できる扉)

 

現代のクルマは「走るコンピュータ」

カーラジオであればノイズの影響は雑音が入る程度ですが、もっと重要な機器に影響を与えたら…。

「電子機器を利用して動作するコンピュータのように、クルマもエンジンや安全装備もすべて電子機器で制御されています。今のクルマは、『走るコンピュータ』と言ってもいいほど、ほとんどの機能に電子機器が関わっています。」

網本はこう語ります。

「エンジンへの燃料の供給が、かつてのキャブレターからインジェクション(電子制御式燃料噴射装置)に変わったのは、もう随分前ですし、ABSなどの安全装備も全て電子部品で制御されています。そしてこれから、もっと電子制御の領域は増えていくでしょう。

万が一これらの電子機器が誤作動を起こしてしまえば、人間の力ではクルマをコントロールすることができなくなり、最悪の場合、事故につながってしまいます。それを防ぐために、不要なノイズが混入しないように、クルマに積まれる電子機器やケーブルなどの重要な部分には、さまざまな対策がとられています。」

「外からの電波に対して機器が正常に動作する能力を『イミュニティ』と言います。ここでは、色々な電波を当てながら実際にクルマを動かし、すべての動作に異常がないかを検証しています」

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(写真 左:実験車両はシャシーダイナモと一体となったターンテーブルの上に)
(写真 右:アンテナは決められた位置に正確にセッティング)

 

検証時は、シャシーダイナモという設備にクルマを置き、多種のアンテナから電波を当てて、クルマの動作を確認。

この時とても強力な電波を使うこともあるため、実験は無人で行います。そこで、人に代わってロボットが、アクセルやブレーキ、スイッチなどを操作します。

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(写真:実験車両に向けられる各種アンテナ)

 

自車からも発生するノイズ

ノイズは、テレビや携帯電話の電波など、外からやってくるものだけではなく、クルマ自体も大きなノイズの発生源となります。パワートレインの信頼性開発に携わる島田はこう語ります。

「特に点火プラグには高電圧の回路が使われており、エンジン周辺からは常に強い電磁波が発生します。この電磁波をそのままにしておいては、自車の電子機器はもちろん、他のクルマや家庭のテレビ、電話などにも影響を及ぼすため、現在のクルマは外に出すノイズも厳格に規制されています。つまり外からのノイズ対策だけでなく、中からのノイズ対策も必要なのです。」

「外に出て行くノイズを『エミッション』と言いますが、クルマの開発においては、先の『イミュ二ティ』と『エミッション』の両方をコントロールする必要があります。このことを『EMC(Electromagnetic Compatibility)=電磁的両立性』と呼びます。」

外からのノイズの影響を抑え、自車が出すノイズも低減する。その両方の検証が、電波暗室では行われているのです。

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(写真 左:エンジン部のノイズ対策は重要)
(写真 右:乗員から発生する静電気の影響も検証)

 

目に見えないものを相手に

電波実験は、一度やって終わりにはなりません。検証の結果、何らかの問題が発見された時は、その原因と対策を導き出さなければならないからです。

「電波は目に見えないだけに、原因を突き止める作業は大変です」と、島田はその苦労を語ります。

 

実験から得られたデータを基に仮説を立て、検証を繰り返しながら少しずつ原因を絞り込んでいくのは地道な作業ですが、その分、メカニズムが解明されていく瞬間はエンジニアとしての喜びを感じるとか。

このEMCの検証は、コンセプトカーの段階から行われています。電子部品は、組み込む前の単体の状態とクルマに組み込まれた状態とではノイズによる影響の出方が異なるため、早い段階で検証しておかないと、市販化に向かう時に問題となるからです。電波環境が複雑になる中、EMCに関わる役割と責任は、今後さらに増していくことになるでしょう。

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最新の技術を陰で支える

マツダの新世代4WD「i-ACTIV AWD」やアクティブセーフティ技術「i-ACTIVSENSE」など。安全で快適なドライブをサポートする最新技術は、高度なコンピュータ制御があってこそ、はじめて実現します。こうした先進的な優れた装備が、間違いなく本来の性能を発揮するためには、EMCは不可欠。

形として表に出ることはないのですが、マツダのつくるクルマのあらゆる部分に、EMCに関わるエンジニアたちの情熱が込められているのです。

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▲シンプルかつ機能的に。コマンダーコントロール開発秘話にせまります。
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