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2016.12.26
【マツダの匠】運転する歓びを感じられるロードスターのクラッチ ~クラッチ開発(後編)

マツダの車づくりに息づく伝統、主義、思想、そして技能。それらを受け継ぐ匠の志や情熱をご紹介する連載企画『マツダの匠』。今回は、クラッチ開発の匠の後編として、ロードスターのクラッチ開発へのこだわりや想いをご紹介します。(前編はこちら

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ロードスターのクラッチ開発

パワートレイン開発本部でMT車のクラッチ開発に携わる石川 美代子(いしかわ みよこ)と、その師匠とも言える桝野 正己(ますの まさみ)。

現行ロードスターのクラッチを開発するにあたり、二人は歴代ロードスターをすべて乗り比べ、徹底的にフィーリングを分析しました。どこでクラッチがつながり始めるのか?その時の踏力は?加速の度合いは?完全につながるまでの過程は?など、あらゆるデータを、センサーを使って地道に集めます。数値では表われない「感」や「フィーリング」の部分は、自分の感覚でチェック。ゆっくりした発進から素早い変速まで、いろいろな走行シーンを想定しながら確認します。

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(写真左:桝野(左)と石川(右))

「歴代ロードスターそれぞれで微妙にクラッチの特性が異なりますが、現行型では歴代ロードスターのすべての長所を兼ね備えたものを目指しました」と石川は語ります。

マツダがクルマづくりにおいて大切にしている「人馬一体」ロードスターが初代から受け継ぐ重要なコンセプトです。開発担当という大きなプレッシャーを抱えながらも、「キャリアが浅くても、想いを強く持っていればチャンスをもらえるのが、マツダのいいところ」と明るく前向きに取り組んだ石川。

その結果、スムーズでドライバーの意思に忠実なクラッチの完成へとつながりました。

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(写真左:狭い車内でペダルにセンサーを取り付ける)
(写真右:計測の際は、金属の棒でペダルを操作することも)

 

「半クラ」しやすさの決め手は、わずか1mmの「潰れ」!?

クラッチがつながり始めからつながるまでの微妙な範囲(つまり半クラの間)では、クラッチディスクに使われる摩擦材の特性と「クッショニングプレート」が重要な役割を果たします。

MT車を運転する際、クラッチペダルで半クラッチをコントロールします。この時のつながり方に影響するのが「クッショニングプレート」(下左写真)。クラッチディスクの摩擦材の間にサンドイッチされた薄い鋼の板です。よく見ると、微妙に波打った形をしており、クラッチが繋がる際に僅かに”潰れ”ます。その量、わずか1mm!!これがないとガツン!と繋がってしまいます。

どの程度の力でどの程度つぶれるのかによって、半クラッチのフィーリングが変化します。

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(写真左:摩擦材に挟まれたクッショニングプレート)
(写真右:波打った段差がバネの役割を果たす)

 

摩耗材のレシピ

摩擦材もクラッチのフィーリングに大きく影響します。摩擦材はゴムやガラス繊維などの様々な素材を混ぜて成形したもので、そのレシピ(配合)によって滑りにくさや摩擦の安定性が変わり、クラッチを繋ぐ際のショックや車体に伝わる振動の出かたが変わってきます。

実際のクルマに取り付けての検証などをサプライヤーさんと一緒に行い、互いの意見を交わして最適な特性を探っていきます。

素材の段階から試行錯誤しながら進めることで、十分に意思疎通ができ、皆が納得するフィーリングに到達します。

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(写真左:クラッチディスクの外周に取り付けられた摩擦材)
(写真右:テスト車に組み付ける前に、摩擦材の厚みを厳密に計測)

 

フィーリングと耐久性の向上!

クラッチが滑るのは、エンジンの力を徐々にトランスミッションに伝えるためです。しかし、滑ることでクラッチディスクは摩耗してしまいます。摩耗のしにくさ(耐久性)と半クラッチ時のフィーリングの両立が重要です。

「フィーリングの向上が、スムーズな発進を可能にし、半クラッチによるクラッチへの負荷(摩耗)が減りました。」と桝野は言います。

必要以上にクラッチを滑らせることが少なくなり、耐久性の向上に繋がりました。

これには、クラッチが担うもうひとつの役割が関係しています。

実は、クラッチは「壊れるようにも」つくられているんです。その理由は、予期しないトラブルが発生した時、クラッチディスクが真っ先に壊れることで力を逃がし、エンジンやトランスミッションといった他の部分に大きなダメージが及ぶのを防ぐため。エンジンの生み出す力は想像以上で、壊れる箇所によっては部品が室内に飛び込んで乗員がケガをする可能性すらあると言います。

長期間にわたる耐久性は持たせながら、必要な時には真っ先に壊れる。意外な役割ですね!

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お客さまの笑顔のために

「最近は私たちもお客さまとお話しする機会を多くいただいています。直接お褒めの言葉をかけられると、やはり嬉しいですね。」と笑顔の石川さん。お客さまからいただいた評価が、また新たな挑戦へのモチベーションに繋がります。「選んでいただいたお客さまの期待を裏切らないものを目指してつくっています」と胸を張ります。

「『目指す理想像は、どんな操作をしても素早く・スムーズにクラッチがつながることで、ドライバーの思った通りにクルマを操ることができること

『MTだから難しい』と思っている人にも是非乗っていただき、MT車で人馬一体・走る歓びを感じてもらいたい。」

理想のクラッチを目指し、桝野と石川の開発は続きます。

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どの車種でも、どのトランスミッションでも、運転すれば自然と笑顔になれるクルマ。それがマツダの目指すクルマづくりです。

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石川が携わる開発の模様は、オフィシャルサイトでもご紹介しています。ぜひご覧ください。

▲ロードスターの達人
http://www2.mazda.com/ja/stories/history/roadster/roadster_25th/interview/nobukawa_ishikawa.html (マツダオフィシャルサイト)

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