MAZDA公式ブログ
2017.1.24
からくり改善を通じた「人づくり」とは?!

1台1台のクルマを、お客様のことを想い丁寧に造り込むことが私たちの使命です。

「工場では、1日何千台ものクルマを造っていますが、その1台1台がお客さまにとっては100%だということを忘れてはいけません」この言葉は、新入社員教育で最初に耳にする言葉であり、私たちがお客様と約束したクルマづくりです。

工場では、誰がやっても確かな品質が保証できる作業を目指して、作業のやりやすさを追求しています。作業がやりやすくなるとより確実な作業が可能となり、それが品質のバラつきを押さえることにつながるのです。

そのための活動の一つが「からくり改善」。誰よりも工場でのクルマづくりを良く知る従業員が、作業に潜む問題を自らの知恵と工夫で解決します。まずは、こちらの動画をご覧下さい。

5個のナットを正確に、そして決められた時間で取るために工夫がつまったからくり機構。
その名も「定量とれるんジャー」!(正義の味方です^^)

これは、車両組立工場で使われている「からくり改善」。手でレバーを押すと、決められた数のナットが、手のひらに落ちてきます。

「からくり改善」とは、電気などを使わず、重力など自然の力を使い、やりにくい作業を自分達の手で改善するとりくみ。マツダでは25年前から行っています。(※「からくり改善」は、マツダ公式ブログでも紹介しています⇒こちら

この「からくり改善」とは作業をやりやすくするだけでなく、大切な意味があります。それは、「人の成長」。「からくり改善」を通して、車両組立が目指すクルマづくりへの想いをご紹介します!

 

誰がやっても、熟練者と同じ作業ができる。
それが「定量とれるんジャー」の狙い

「定量とれるんジャー」の製作者、中原和貴(なかはら かずき)は、入社11年目。職場の改善活動ではリーダーです。その製作背景についてこう語ります。

車両組立工場では、1台の車を完成させるために、約2,000点もの部品を700個のボルト/ナットを使って従業員が組み付けています。部品の組み付け作業は、必要な数のボルト/ナットを取り、工具で1カ所ずつ締め付けていきますが、必要な数のボルト/ナットを手の感触だけで部品箱から確実に取るのは、かなり熟練を要します。

組立工程では、1日に1,000台を超えるクルマを生産しており、全体で見ると1日70万個以上のボルト/ナットを取っていることになるんです。

「誰がやっても、熟練者と同じ作業ができる!」それが「定量とれるんジャー」の狙いです。

 

問題を捉える目付きを鍛える

改善の第1歩は、改善すべき「問題」を捉えることから始まります。

私たちが目指す作業とは、「誰がやっても安定した高い品質で造り込める」作業です。それを実現するために、作業のやりやすさにこだわった改善をおこなっています。やりにくい作業は作業者の負担となり、品質がバラつく原因にもなるからです。

負担になる作業とは、「手を伸ばす」「歩く」「振り向く」といった動作はもちろんですが、部品を取る時の選択や数の確認など「判断」も含みます。私たちはそれらを「ムリ」(無理)な作業と呼んでいます。「ムリ」は、作業時間のバラつきとなって現れます。そうしたバラつきを「ムラ」と呼んでいます。部品の取り直しなど、作業の度に異なる手順が発生する「ムラ」のある作業は集中力を欠き、それが品質の「ムラ」にもつながります。だから、安定した品質を保証するためには、「ムリ」な作業を改善し、やりやすくすることが大切になるんです。

「ナットの数の判断」というムリが、「ナットの取り直し」というムラを生んでいます。今回はこれを問題と捉えて改善をスタートしました。

 

理想の姿を思い描き、想いを形にする

「ナットの数を確認しないといけない」という問題に対し、自分が思い描く理想の姿を想像します。

「必要な数のナットが簡単に取れるようにしたい!」。実はこの想いは、僕が入社するよりずっと前から先輩たちによって多くの試みがなされてきています。これまでは、市販の装置を購入して、それを改造した事例が多かったんですが、価格が高価で全ての工程で使うまでには至っていませんでした。今回の定量とれんジャーは、「誰でも作れて、どの工程でも使えるシンプルなものにしたい!」という想いで製作。でもこれが大変なんです。

からくりの基本機構を勉強しながら、利用できそうな改善事例がないか徹底した情報収集。そして、出来上がりの姿をラフスケッチで描いてイメージを固めながら、使用する材料の検討も並行して進めます。特別なものではなく、どの職場でも入手しやすいものを選ばなくてはいけません。


(図:思いつきを発想につなげるラフスケッチ)

机上では成り立っていても、実際に制作するとナットが引っかかって出てこなかったり、動かすのに予想以上に力が必要だったり・・・そこからは、色んな人の知恵も借りながらの試行錯誤です。

「こうすればうまくいくんじゃないか」と思ってもうまくいかない。当然がっかりします。やらされてる仕事ならとっくに諦めるところですね(笑)。でも自分が創造する仕事である以上は意地がありますからね。

一つのアイデアがダメなら原因を考えて「こうしたらうまくいく!」という結論を出し、前に物事を進めていく。この繰り返しです。自分でも驚くほどの超ポジティブ人間になります。こうしてようやく完成にこぎつけました。

 

共感が自信に変わる

中原は最後に、からくり活動について、こう力強く語りました。

「ようやく出来上がったときは『一生懸命やれば何とかなるものなんだな~』としみじみ実感しました。みんなから『よく出来たな~』『これは良いわ~』と言ってもらえたときのうれしさは言葉では言い表せません。

そして、今年の本社工場『からくり改善くふう展』(※注)で最優秀賞をいただきました。

周りの人たちからの共感が得られると、自己満足が自信になりました。」

 

作業の改善だけでなく、「意欲」までも改善する

「もっと楽にできないか」という単純な動機から出発した改善も、「周りの人たちに喜んでもらえる仕事を」と捉えることで、モチベーションの質が向上します。自分のためだけでなく、自分をとりまく人のためと思えば、挑戦する勇気にもつながります。からくり改善は、そのきっかけをつくり、成功体験を通じて自分自身の「意識」を改善できる取り組みなのです。


(写真:本社工場からくり改善くふう展の様子)

※「本社工場からくり改善くふう展」は、からくり改善を参加者・来場者が互いに学び合う場。また来場者の投票によって各賞を決める賞賛の場として年1回開催しているイベントです。15回目を迎えた今年、海外拠点を含むマツダグループから27作品がエントリーしました。

 

車両組立工場が目指すクルマづくりへの想い 

部品を装着したときの感触、ボルトを締める音、工具から伝わる振動・・・。五感を通じて伝えられるこれらの情報を常に意識しながら多種多様な部品を人の手で組み付け、確かな1台を完成させる組立ライン。

車両組立工場を出た完成車は、納車を待つお客様のもとに届けられます。最終製造工程として、お客様に最も近い私たちには、品質に絶対の自信が持てるクルマづくりがなにより求められます。クルマとともに進化するクルマづくりにおいて、私たちの改善の目的は、常にお客様の1台を保証することです。「決まった数のナットを取る」という1つのことへの多くの人の関わりも、当たり前のことを当たり前にできるようにするための挑戦でした。将来にわたって確かな1台をつくり続けるための改善に終わりはありません。常にベストを追求する姿勢が、今後もマツダのクルマづくりを支えます。

作業がやりやすくなるだけでなく、その成功体験を通じて得られる更に高い挑戦する意欲

25年間続くマツダのからくり改善は、このマインドを一人一人が育み、全員で共有していくための人づくりでもあります。

なお、からくり改善の様々な取り組みは、公式ブログにてご紹介しています。ぜひご覧ください。

 

カテゴリー:モノ造り