MAZDA BLOG
2018.10.22

次世代車両構造技術「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」とは?

「人馬一体」のさらなる進化に向けて「人間の体が本来持っているバランス保持能力を最大限に活用」

 

マツダの目指す「走る歓び」。それは、例えばジェットコースターで感じるような、急激な加速感や、加速度の変化がもたらす高揚感ではありません。

日常の通勤や買い物、家族との遠出といった運転シーンにおいて、まるで長く使い込んだ道具を扱うかのように、自分の意図通りに走り、曲がり、止まることができる。そして、その手ごたえを感じ、ずっと運転していたくなる。人間が持つ「自然に振る舞う」動きに、クルマの動きを一致させることで、一緒に乗っている人も、クルマの動きを自然に感じ取ることができ、安心して乗っていただける。また、目にした瞬間に心を奪われ、その場所の風景や光により表情を変えているクルマを、ずっと眺めていたくなる。そしてまた走りたくなる。

このようなクルマを所有し、どこまでも一緒に走り、過ごすことで得られる「心の満足」。これが、マツダの目指す「走る歓び」です。

 

その実現にむけて、車両開発領域においては、ドライバーの意思とクルマの動きが一体となって安全・安心に、意のままに走る「人馬一体」を一貫して追求。そのあるべき姿を追い求め、マツダは「人間中心」の哲学によるクルマづくりに、こだわってきました。

マツダは、従来のスカイアクティブ技術を基本性能から徹底的に研ぎ澄ました、次世代車両構造技術「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE(スカイアクティブ ビークル アーキテクチャー)」を開発。次世代エンジン「SKYACTIV-X(スカイアクティブ エックス)」とともに、2019年以降発売される次世代商品に採用していきます。

 

 

クルマの構造全体としてコーディネート

「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」では、人が歩行時に無意識に行っているバランス保持能力をクルマに乗車している時にも発揮できること目指しました。すなわち、「歩くように何気なく、意識せずクルマの動きを自然と感じられている状態」です。これにより、人間が本来持っている能力を最大限活用した、すべての乗員が快適で疲れない、究極の「人馬一体」による「走る歓び」を実現することができます。

そのために、人が座るシートからボディ・シャシー・タイヤまで、個々のシステムよりもクルマのアーキテクチャー(構造)全体としてのコーディネートを重視。これらを、有機的な連携をもって開発しています。今回は、この「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」の考え方についてご紹介します。

 

 

人の「歩行」にみる「理想の状態」とは?

MAZDA SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE

人間は、歩行する際に無意識に脊柱の柔軟性を活かして、バランス保持の基準となる進行方向の軸を作っています。これをマツダでは「進行軸」と呼んでいます。

この「進行軸」を基準に骨盤と上体を逆方向に動かすことで、少ない姿勢変化および筋力で効率よく体の重心をコントロールし、頭部の動きが抑えられた動的なバランスを保持しています。そして、方向転換や段差を乗り越えるときも、この「進行軸」がぶれることなく滑らかで連続的に動くようにしています。

これは、人間が本来持つ高度な能力の一つである「バランス保持能力」を、無意識に発揮していることによるものです。

 

この基本状態を維持するポイントは、

「脊柱がS字カーブを保つよう骨盤が立っていること」

「足から伝わる地面からの反力を滑らかに骨盤に伝えて、骨盤自体が規則的にかつ連続的に滑らかに動いていること」

の、2点となります。

MAZDA SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE

 

MAZDA SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE

これをクルマに置き換え、クルマ乗車時でも歩行時と同様に、人間が本来持っている「バランス保持能力」を発揮できる「理想の状態」を作るにはどうすべきか?について考えました。以下の2点がポイントとなります。

  • 脊柱がS字カーブを保つように骨盤を立ててシートに着座できること
  • 人間の足の代わりに、クルマが路面の力を滑らかに骨盤に伝え、骨盤を連続的に滑らかに動かすこと

 

「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」では、この「人間の体が本来持っているバランス保持能力を最大限に活用」することを目指しました。

 

 

各領域の進化をご紹介

MAZDA SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE

ここからは、そうした考え方を取り入れて開発した「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」の主要技術をご紹介していきます。

 

・シート ~脊柱のS字カーブを維持~

乗車時においても骨盤が立ち、脊柱がS字カーブを維持できるように座らせるため、シート構造に最新の人間研究の知見を織り込んでいます。

人間の腰椎を支えることで骨盤が後ろに倒れることを防ぐとともに、胸郭重心部 *1 を包み込むシート形状・硬さにすることで脊柱がS字カーブを維持できるよう支持。さらに大腿部の支えを独立して調整可能にし、すべてのお客さまに理想の運転姿勢を提供できるようになりました。

その上で、ばね上から人体まで直線的に荷重が伝達するよう、シート内部機構の剛性も高めています。

*1 胸郭重心部は上半身重心の存在する場所で、身体の重心に大きな影響を与えます。

 

・ボディ ~力の伝達を遅れなく~

ボディ骨格を従来の上下左右に加え、前後方向にもつなぎ多方向に環状構造化することにより、四輪対角剛性が向上し、遅れなく力が伝達されます。これにより、フロントからリアの対角への入力時間の遅れが30%短縮可能になり、人間が持つ「自然に振る舞う」動きにクルマの動きがより一致するようになりました。

MAZDA SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE
左:従来の車体骨格、右:SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE
力の流れを解析しながら、4輪対角剛性を向上させるという視点で効果的に骨格(赤色部分)を配置

 

・シャシー ~ばね下からの入力を滑らかに~

路面からの入力は、サスペンションを通ってボディへと伝わります。「SKYACTIV-ARCHITECTURE」では、従来のばね上に伝える力の「大きさを低減する」という考え方から、ばね上に伝える力を「時間軸で滑らかにする」という考え方に変えて設計し直しました。

サスペンションの前後支持剛性、タイヤ、アーム、バネ、ダンパーの各部品が時間軸で、順番に相互に連携することで、ばね上の動きの唐突さを整えます。また、タイヤの上下バネをこれまで固くしてきた方向から、柔らかくする方向に変更し、タイヤゴム本来の持つ振動吸収・減衰の機能を活かすようにしました。

また、この開発においては「G-ベクタリング コントロール」による操舵時の荷重移動を積極的に活用し、タイヤのグリップ力を遅れなく発生させることで、実現させています。

 

・NVHもさらに進化!

人間が持つ能力を最大限に活かすためには、静粛空間を提供することも重要なファクター。「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」では、NVH *2 性能も大きく進化させました。

人間が音を感じ取るメカニズムを研究し、音の「大きさ」だけでなく、音の「時間変化」や「到来方向」に注目し、ボディに入った振動エネルギーを減衰させるようにしました。そのために、減衰節や減衰ボンドを効果的に構造に配置し、一段上の質の高いNVH性能を実現しています。

*2 NVH:Noise Vibration Harshnessのこと。自動車における、騒音・振動・乗り心地を表す言葉。

 

以上、難しい話になりましたが、「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」の概要をご紹介しました。しかし、こればかりは実際に乗っていただかないとわからないもの。マツダの新世代商品が発売された時には、ぜひとも本ブログの内容を踏まえて、試乗してみてください!!

MAZDA SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE

 

(2019年2月追記:ご参考

■動画:マツダ 「人間中心」の考え方 SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE(YouTube)

■動画:The Art of Human-Centricity(日本語字幕版・YouTube)

■オフィシャルサイト:マツダ新時代が幕を開ける
https://www2.mazda.co.jp/cars/new_generation/pre/

カテゴリー:クルマ , ストーリー