MAZDA BLOG
2021.7.21

お客さまの命を守るために。安全啓発活動に携わるエンジニアたち。

皆さんは、日本全国で年間何件の交通事故が起こっているかご存じでしょうか。

年間の交通事故の発生件数は30万件※1以上、そして交通事故で負傷される方は36万人※1以上といわれています。
※1:令和2年中 警察庁のデータより(事故発生件数は物損事故を含まない)

 

 

マツダは、自動車メーカーとして、こうした交通事故の中で起こる「衝突事故における死亡・重傷者をゼロに近づけたい」という想いで、安全性能の研究開発に取り組んでいます。

マツダの安全思想はこちらから、

 

また、もし事故が起こってしまった場合でも、被害を最小限に食い止めるために、衝突時の衝撃を吸収したり生存空間を確保するような車体構造、シートベルトやエアバッグによる乗員の保護、歩行者の被害を軽減する機能など、さまざまな工夫をしています。

 

どんな技術も正しく使用してもらえなければお客さまを守れない

そしてもう一つ、お客さまの命を守るための、大切なアプローチがあります。

それが、「安全啓発活動」です。

マツダでは、安全性能開発の最前線にいる衝突性能開発部のエンジニアたちが、啓発活動にも取り組んでいます。きっかけは、あるメンバーの気づきでした。

 

「保育園の送り迎え時に、運転席と助手席の間に子どもが立って乗っていたり、膝に抱っこされていたり、チャイルドシートを使用せずにクルマに乗る親子を何組も見かけることがあり、とても危機感を抱いていました。」

衝突性能先行技術開発グループの吉村 美枝(よしむら みえ)は、衝突性能実験など業務を通して、衝突事故の怖さを知っているだけに、「この状況を放置してはいけない、シートベルトの役割や重要性が伝わっていない、そう強く感じた」と言います。

 

「何から始めるべきか・・・」

吉村が最初に提案したのは、シートベルト着用率向上を目的とした啓発活動でした。

 

「シートベルトはお客さまにとって最も身近な安全装備で、カチっとしめるだけで命を守ることができます。シートベルトを装着することの重要性を理解し、行動に移してもらいたいという想いで活動を始めることにしました。」

まず、着用することの大切さ、重要性を知ってもらうための啓発用ビデオを制作。それも、衝突事故時だけではなく、時速40kmで急ブレーキをかけた時を想定したものも制作しました。というのも、実際に衝突事故に遭うことは少なくても、急ブレーキをかけざるをえない状況は意外と多いためです。

 

もしお子さんがシートベルトをしていなかったり、大人の膝に抱っこされていた時に急ブレーキをかけた場合、車内で一体どんなことが起こるでしょうか。

時速40kmというスピードでも、抱っこされていた子どものダミー人形は親の手から離れ、前方に放り出されてしまいます。大人の力だけで子どもを守ることはできないのです。

 

続いての動画は、衝突事故を起こしてしまった時の車内の様子です。

画面左から来るクルマは、シートベルトやチャイルドシートを全乗員が適切に装着、画面右から来るクルマは、運転席以外の乗員がシートベルトやチャイルドシートを非着用の状態です。

シートベルトやチャイルドシートの着用状況によってどのような違いがでるでしょうか。

結果は一目瞭然です。

 

最新のシートベルト着用状況全国調査※2では、一般道での後席シートベルト着用率は40.3%。後席のシートベルト着用は、2008年の道路交通法改正で義務付けられましたが、依然として後席は他の座席と比べて着用率が大幅に低く、シートベルト着用の重要性が十分に認識されていないのが現状です。
※2:2020年度 警察庁と一般社団法人日本自動車連盟(JAF)の合同実施

 

また、チャイルドシートの装着率※3に関しては、チャイルドシートを使用していた幼児のうち、幼児を適切に着座させることができていた割合は42.2%というデータもあります。
※3:警察庁と一般社団法人日本自動車連盟(JAF)が、令和元年6月1日から6月16日までの間に合同で実施したチャイルドシート使用状況の全国調査の結果より

 

開発エンジニアだからこそ伝えられること

また衝突性能開発部のメンバーは、自社イベントのほか地域主催のイベントなどに出向き、啓発活動を継続的に行っています。

「私たち、開発エンジニアだからこそ伝えられる想いもあるんです」と、ユニット安全開発グループの水口 浩爾(みずぐち ひろし)。

 

 

日々安全性能の向上に向けた研究開発に携わっている中で、伝えたいマツダのクルマ作りのポイントがあるといいます。

 

「一般的にクルマのシートベルト(下部)の固定部分は、ボディ側に固定していることが多いのですが、マツダ車は、新世代商品群※4から前席シートベルト(下部)をシート側に固定しています。
※4 対象車種は、MAZDA3、CX-30。
MX-30は観音開きドアのため、シートベルト(下側)の固定部位は、リアドアである。

 

 

お客さまの体格に合わせてシートの位置を調整しても、常に最適なシートベルト位置を確保できるように、という考えからの設計です。」

下の画像は、乗員が座席にシートベルトを着用して座り、シートを前後にスライドした際に、身体の腰部(緑色)にシートベルト(茶色)がどうかかるかを比較したものです。

シートベルト下部:ボディ側(写真左)、シート側(写真右)

シートベルト下部をシートに固定することでスライド時にも同時に動くため、どのポジション(位置)でもシートベルトと身体(腰)の位置関係が変わらず、最適な状態に維持できることがわかります。

 

「シートベルト着用の重要性を、もっと広く知ってもらいたい」との想いから、啓発活動で使うモデルカーの衝突実験キットも準備しました。

イベントでは、人形を乗せたモデルカーを、傾斜をつけた板の上で走らせ、壁に衝突する様子を目の前で見ていただきます。一連の動きは一瞬で終わるため、次に同時に高速度カメラで録画していたものを見ていただきます。

シンプルな作りの実験ですが、シートベルト着用の有無で乗員の動きがどう変わるのかを簡単に目の前で見ていただけるため、特に小さなお子さんのいる親子連れの方に、シートベルト着用の重要性を実感いただいています。

 

 

また、同じく活動に参加する側面・後面衝突安全開発グループの棟田 絵美子(むねた えみこ)は次のように語ります。

 

「普段は開発業務を行っているため、安全啓発活動は、お客さまと直接お話することができる貴重な時間です。イベントに参加してくださったお客さまから、『これからは必ずシートベルトを付けます』と言っていただけたときは、安全の大切さが伝わり、非常に嬉しかったです。」

 

 

「安全啓発活動を積極的に実施されているJAF(日本自動車連盟)広島支部さんの協力も仰ぎながら、マツダイベント会場のみならず、遊園地や地域イベントなどにも活動の輪を広げています。近くの方はぜひ覗いてみて欲しい」といいます。

 

最後に、メンバーたちに、これからの活動の展望を聞いてみると、

今後は、より小さいお子さんを対象にした活動も充実させていきたいとのこと。

幼少期から習慣としてもらい、安全装備を当たり前に感じてもらいたい、という想いがあります。そのため、地域の小学校や公民館への出前授業も準備中です。

 

自分たちができることから始めて、少しずつ、その活動の輪は大きくなっています。
どこかの会場で、ブログ読者の皆さまにもお会いできるかもしれませんね!

 

マツダは、交通事故による死傷者低減には、「安全技術の研究開発」と「安全啓発活動」がどちらも欠かせないという強い信念のもと、今後もお客さまの安心・安全なカーライフを守る取り組みを継続していきます。

 

マツダの衝突安全性能開発の考え方は、以下のブログ記事でもご覧いただけます。

前編:マツダの衝突安全性能に込めた想いとは
https://blog.mazda.com/archive/20180315_01.html
後編:マツダの衝突安全性能〜3列目の安全を確保せよ〜
https://blog.mazda.com/archive/20180322_01.html
潜入取材!マツダの新・衝突実験棟
https://blog.mazda.com/archive/20181218_01.html

カテゴリー:クルマ