シンプルかつ機能的に。コマンダーコントロール開発秘話にせまります。
ナビやオーディオなど、センターディスプレイに表示される項目すべてを操作できる「コマンダーコントロール」。
その開発に携わったエンジニアの姿と「こだわりの機能」をご紹介します。
まず、コマンダーコントロールとはどのようなものなのか、上の写真を使ってご説明します。センターにある円い大きなダイヤルがロータリースイッチ。左右の回転、上下左右のチルト操作で項目を選択し、押下で決定を行います。そして、ロータリースイッチの周りに配置しているのが、よく使う項目に直接アクセスできるボタンです。
「ボタン配置」はシンプルかつ機能的。ドライバーがドライビングポジションを取ったとき、腕を自然に下ろした位置に設置されており、手元を見なくても操作することができます。だから、マツダコネクトなど、さまざまな機能を使用するときでも、迷うことなく直感的に操作することができるのです。
「コマンダーコントロールは新世代商品群の全車種に導入しています。ナビやオーディオなど、ドライバーが処理する情報は増加しています。そのような状況でも、車を安全に運転してもらうために採用した装備です。」
コマンダーコントロールの開発に携わる、車両開発本部の栁陽一(やなぎ よういち)はこう語ります。
(写真 左:コマンダーコントロールを担当して4年の栁、写真 右:CX-5のインテリア)
重要な3つの要素
コマンダーコントロールの開発にあたって、特に重視したのは次の3点。
①操作時の安定した姿勢。
②ドライバーが、自然に体重をかけた状態で、手元を見なくてもコマンダーを楽に操作できること。
③操作時、コマンダーがメリハリのある動きを通じて、正確に動いたことをフィードバックする。
試行錯誤の上、コンパクトカーゆえの課題を克服
「コマンダーコントロールをデミオに導入する際、コンパクトカーゆえの課題が発生しました。
その課題とは、デミオはコンソールの幅が狭く、従来のコマンダーコントロールの形状では設置できないこと。そしてさらに、アームレストが無いため、狙いのドライバーの姿勢を確保できないことです。
室内の広さに応じて、ただ部品を小さくするだけでは問題は解決しません。部品の構想・デザインを関係部門で合意するまでに1年掛かりました。」
最終的に採用した解決方法は、手のひらの手首側を支える「パームレスト」の設置です。このパームレストによって、アームレストがなくても、手の位置を安定させ、操作時の姿勢を保持することができるようになりました。
パームレストの形状にも、機能性だけなく、インテリアと調和したデザインを実現するために、議論を重ねました。
形状案として、カップホルダータイプや、土手をつけコンソールになじませるタイプ、突起を付けるタイプなど、様々な案を検討。質感についても、プラスチックにするか、ゴム材がよいかなど、ユーザーが感じる感覚に合うものを追求しました。
コマンダーのクリック角度についても、人間の動きや、様々な体格を想定して検討しました。デミオではパームレストで手首を固定するため、アームレストに肘を置いてコマンダーを操作することができる車種と比べ、操作する関節の可動範囲が狭くなります。そこで、もともと18クリックでコマンダーを1回転していたものを、24クリックに変更して、従来のコマンダーと変わらない操作性を実現しました。
試作品の完成後は、実際に走行テストを繰り返して操作性を確認。開発者の主観だけでなく、様々な体型の人に操作してもらい、検証を積み重ねます。
(写真:体型を問わない操作性を実現するためにテストを繰り返す)
進化し続けるための、一つひとつの積み重ね
「一番大切にしたのは、開発当初に考えた三つのコンセプトです。この考え方は常に忘れず、開発を進めています。デミオに搭載された後も、お客様からは様々な意見が寄せられています。そう言った意見や要望にできるだけこたえられるように、研究を続けています。一つひとつの積み重ねこそが、技術の向上にも繋がっています。」
と車両開発本部の松尾数哉(まつお かずや)は語ります。
(写真:インテリアに配置している、様々なスイッチやモニターの開発経験を生かし、コマンダーコントロールを手がけて2年の松尾)
ドライバーのハートに響く、走りやすさのために
「コマンダーコントロールは、人間の体格を見た上で適正な位置に配置されており、運転操作の妨げにならず、意識せず触ってもらえることを目指しています。実際に車に乗って、そして走ってもらうことで、初めてその良さが体感いただけると思います。ドライバーのハートに響く、また、走りやすさにつながる装備の開発に取り組み続けます。」
最後に、栁さんは力強い眼差しでこう語ってくれました。
いかがでしたか?
安全に、安心して「走る歓び」を楽しんでいただきたい。「コマンダーコントロール」にはそんなマツダの想いが詰まっているのです。理想の追求、そして夢へのチャレンジはまだまだ続きます。