マツダが挑むマルチソリューション① ~CX-60で目指した本質的CO2削減と走る歓びの両立とは~
昨年デビューした「CX-60」は、マツダのラージ商品群の第一弾として導入され、マツダ初となるPHEVを設定するなど、さまざまな新技術が織り込まれています。
そこで今回ラージ商品群について、「マツダが挑むマルチソリューション(前後編)」とCX-60 PHEVをご購入いただいたお客さまの「オーナーズボイス」を連載でお届けします。
「マツダが挑むマルチソリューション(前編)」では、ラージ商品群の狙いや新技術に込めた想いについて、戦略立案を推進した商品戦略本部 本部長の佐賀 尚人にインタビューした内容をご紹介します。
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佐賀 尚人(さが なおひと)
商品戦略本部 本部長
ラージ商品群の戦略立案をリード
– ラージ商品群※の開発にあたり、どのような狙いで新技術の開発・導入を決めたのでしょうか。
「本質的なCO2削減」そして、マツダが大切にしている「走る歓び」の追求。
この2つを両立すべく開発した新技術が、ラージ商品群※に織り込まれています。
つまり、マツダのコーポレートビジョンの実現が狙いです。
※ラージ商品群とは、CX-5より大きなサイズと幅広い価格帯を持つミッドサイズSUV群。日本には2列シートのCX-60を導入済、今後3列シートのCX-80を導入予定。
マツダは、コーポレートビジョンで「カーライフを通じて、人生の輝きを提供します」と宣言しています。
このコーポレートビジョン実現にむけたロードマップは、今年発行した統合報告書にて公表していますが、これは2017年に発表した技術開発の長期ビジョン「サステイナブルZoom-Zoom宣言2030」をアップデートしたものです。
「走る歓び」「人馬一体」を感じられ、地球や社会と永続的に共存するクルマをより多くの人にお届けすることで、「地球」、「人」、「社会」の課題解決を目指すという内容で、このラージ商品群もその一つです。
– 「本質的なCO2削減」 とは、どういうことでしょうか。
Well to Wheel※またはLIFE CYCLE アセスメント(LCA)と呼ばれる考え方で、資源の採掘から、クルマの製造、輸送、クルマの使用、整備、廃棄、リサイクルまでのすべての面でCO2を減らしていくことです。
※Well to Wheel: 走行中のCO2だけでなく、燃料/電力が作られるところから給油/給電を経て走行に至るまでの一連の過程でCO2の排出を減らすこと。
例えば電力は、国によって発電方法が異なりますが、それにより発電時のCO2排出量も大きく変わってきます。
電力をほぼ太陽光発電などの再生可能エネルギーで賄っている国では「電気=CO2を出さないエネルギー」と言えますが、電力をほぼ火力発電で賄っている国では、「電気=CO2を出さないエネルギー」とは言えません。
したがってマツダは、各国・各地域の発電方法や燃料・インフラの状況に合わせて、販売するクルマの動力源をフレキシブルに提供していく「マルチソリューション」という方針を掲げ、地域毎にCO2削減を着実に推進していけるようにしたいと考えました。
– 欧米を中心に規制や政策の影響もあり、電気自動車への移行が進む中で、エンジンなどの内燃機関と電動化の開発に並行して取り組んできたのはなぜですか?
マツダは130カ国以上でビジネスをしており、世界中にお客様がいます。
国により規制や政策、発電方法や充電設備などのインフラの状況はさまざまです。
カーボンニュートラルに向け世界は大きく動いていますが、本質的なCO2削減を考えると克服すべき課題はさまざまで、一気に達成できるものではありません。
この移行期に最も重要なことは「CO2排出量の抑制」と、限りある資源である「化石燃料消費量の削減」です。
また、ガソリンなどの化石燃料に代わる「カーボンニュートラル燃料」や「バイオ燃料」といった新たな燃料の可能性も検討されています。
これらの状況を踏まえると、電動化と共に、内燃機関の進化もまだまだ必要であると判断しました。
「マルチソリューション」では、あらゆる動力源を想定しており、ビルティングブロック構想(上図)に沿って段階的に開発を進めてきました。
PHASE1では「燃焼」などベースとなる技術を磨いてガソリンエンジンとディーゼルエンジンを進化。
PHASE2にあたる今回のラージ商品群では、マイルドハイブリッド(Mild-HEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)といった電動化と、直列4気筒・直列6気筒のガソリンエンジンとディーゼルエンジンを組み合わせ、各国や地域の特性に応じた商品展開としています。
– なぜ今回PHEVを導入したのでしょうか。
PHEVは、ハイブリッドの延長線上にあるクルマです。
ハイブリッドよりも大きなバッテリーを載せているので、より積極的に電動アシストを使うことができ、燃料の消費量を抑えて走ることができます。
外部充電もできるためEVのような使い方も可能で、PHEVは電欠しても燃料で走れます。
充電インフラが整っていない地域でも、燃料があれば走れますので、「なるべく燃料を使いたくない、でも遠出もするからEVでは不安」という方に適した選択肢になると思います。
現状では、国によって発電方法はまちまちですし、インフラにも限界があります。
今できるのは燃料の消費量を減らすこと、これは先のビルティングブロックとも一致する考えです。
PHEVなら、より多くのお客さまに燃料消費を抑えながらクルマにお乗りいただくことができると考えています。
マツダで初めて導入したe-SKYACTIV PHEV(動画1:51)
– ディーゼルエンジンが大排気量の直列6気筒になりました。この狙いは何ですか?
目的はPHEVと同じく「燃料の消費量を減らす」こと、つまり「CO2排出量を抑制する」ことです。
「直列6気筒」「大排気量」という部分がクローズアップされていますが、それらは結果であって本質ではありません。
「どうすれば一番効率的に燃料を燃やせるか」、「どのような環境下であれば、燃やした燃料を効率よく動力に変えられるか」を突き詰めていくと、直列6気筒の排気量3L相当で、大きいトルクで低い回転数で気持ちよく走った時に、非常に燃費がよくなることが分かりました。
こうした検討を経て、3.3Lの直列6気筒ディーゼルエンジンの開発に至っています。
実際、ある媒体のテストで、このエンジンを載せたCX-60がコンパクトカーCX-3同等の燃費で高速道路を走ったという結果が出ています。
実はマツダは30年以上前、ミレーニアという車種でミラーサイクルエンジンを出した頃から、ずっと「燃焼」に着目して取り組んできました。
「走る歓び」「人馬一体」をサステイナブルな世界でも実現させるにはどうするか、最初の答えが2011年のSKYACTIVエンジンでした。
今回のエンジンもその延長線上にあり、今まで「燃焼」を突き詰めてきたマツダならではの現時点の回答と受け止めていただけたらと思います。
– ラージ商品群のもう一つの狙い「走る歓び」の追求 についても教えてください。
「走る歓び」に関しては、マツダの開発哲学である「人間中心」をいかに進化させるかを念頭に置きました。
「人間中心」とは、人間の本来持つ能力や感覚を最大限に活用することです。
人間は、自分の能力や感覚を発揮することに喜びを感じます。
スポーツや工作などの楽しさを思い浮かべていただくと分かりやすいかもしれませんが、クルマで言うと「思い通りに走れること」がそれに当たります。
思い通りに走れると、身体が活性化され、結果として心も体も元気になります。
走ることが好きな方だけでなく、若い方・初心者の方から高齢者の方まで等しく、自分で運転することを通じて元気になってほしい、カーライフを通じて毎日を楽しく、輝ける人生のお手伝いがしたいというマツダの変わらぬ思いを込めています。
それを実現するために、ラージ商品群で新たに採用したのが「縦置きエンジン・後輪駆動」のFR※プラットフォームです。
※FR: フロントエンジン・リアドライブ(前方にエンジンを配置した後輪駆動のクルマ)
「縦置きエンジン・後輪駆動」とすることで、車両の中心に重たいユニットを集約し、人間で言うところの「体幹」を強化しました。
また、FRにすることで、四輪にかかる重量を等しくすることができ、前進するパワーをしっかりと路面に伝えやすくなりました。
ハンドリングの良さと走行安定性にもつながり、走る歓びを大幅にレベルアップしています。
FR化により重たいユニットを車両の中心に集約することで、クルマの「体幹」を強化
従来のFF※プラットフォームの場合、「左右の方向指示」も「前進/後退」も前輪が担いますが、FRの場合、前輪は「左右の方向指示」、後輪は「前進/後退」という役割分担ができます。
役割分担することで、ハンドルを大きく切ることが可能となり、「大きなクルマでも最小回転半径を小さくし、小回りを良くすることができる」というメリットもありました。
※FF: フロントエンジン・フロントドライブ(前方にエンジンを配置した前輪駆動のクルマ)
昔は「後輪駆動にすると居住性が犠牲になる」という欠点がありましたが、近年の技術進化により、居住性を犠牲にせずに、走行性能の高い後輪駆動車をつくれるようになりました。
デザイン面のメリットも踏まえて、今回のチャレンジに至りました。
ラージ商品群の一つであるCX-60は、「地球環境への貢献」と、どなたでも体感いただける「クルマ本来の楽しさ」を高次元で融合させることを目指して開発したクルマです。
安心感のある走行フィールも合わせ持っていますので、さまざまなお客様に是非ご体感いただき、素敵なカーライフを過ごしていただければと思います。
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いかがでしたでしょうか。
前編では、マツダのラージ商品群で実現されるマルチソリューションの狙いについてお届けしました。
次回はマルチソリューション実現の「モノづくり」のお話をお届けします。
お楽しみに!
■関連リンク
・マツダ統合報告書(オフィシャルサイト)
・ラージ商品群プレゼンテーション①戦略(公式YouTube)
・ラージ商品群プレゼンテーション②パワートレイン(公式YouTube)
・MAZDA CX-60(オフィシャル車種サイト)