「鉄板は生き物」磨き抜かれた匠の技を持つ現代の名工をご紹介!
みなさん、「現代の名工」という表彰をご存知ですか?
これは、ものづくりの分野で卓越した技能者が表彰されるもので、厚生労働省から毎年150名ほどの技能者に授与されています。今日は、2012年の「現代の名工」に選出されました、マツダ本社工場勤務の齋藤薫さんを通して、磨き抜かれた匠の技の奥深さをお伝えします。
齋藤さんが卓越した技能を持つのは、自動車製造における「板金・溶接・仕上げ」の領域。鉄板を扱う高度な職人技を見せてもらいました。
鉄板の裏側から正確に凹凸を捉える技術と絶妙な力加減で、板厚0.8mm以下の薄板の溶接ひずみを手で仕上げていきます。その精度はなんと、12/1000mm以内!人間技とは思えない精度です。
今では、誰もが認める卓越した技能を持つ齋藤さんですが、ここまでに道のりは苦労と試行錯誤の連続だったそうです。1973年にマツダ株式会社(当時は東洋工業)に入社し、車体の溶接組立・板金仕上げ部門に配属。現場では先輩の動きや技術を見よう見まねで、必死になって学びとったそうです。
自分のことを「負けず嫌い」と断言する齋藤さん。
「自分の弱さ、悪さ、なぜできないのか。PDCA(Plan→Do→Check→Action)を回し、自己分析を徹底しました。先輩にも進んで質問し相談するが、最後は自分でトライアンドエラーを繰り返し学んできました。」
生産技術領域でライン工程の量産不具合対策を担当したのち、3年半のアメリカ赴任を経験するなど、様々な角度から技能と、そのあり方を見つめてきました。
そんな齋藤さんのまっすぐな真剣さは、仕事以外の場面でも発揮されていました。プライベートでは、「マツダファンクス」という野球チームに所属し、キャプテンとしてチームをまとめていたという一面も。
(齋藤さんは前列の左から2番目です)
そんな齋藤さんが、現在、重点を置いているのは「技術の継承」。国家技能試験や社内検定を目指す技能者に、長年の経験で培った技能や知識を伝授し、100名以上の若手社員を指導してきました。
「鉄板は生き物」。それが齋藤さんの持論です。
「鉄板を活かすのも腕次第ですが、削ってしまうと鉄板の命を奪いかねない。だからこそ、安易に削らない。仕上げるために削るのであって、削って仕上げるのではない」
そして、もうひとつ、齋藤さんが指導の場で大切にしていること、それは「礼儀や学ぶことへの姿勢」だそうです。「技能も精進しないといけませんが、知識・技能・態度の調和のとれた、信頼される技能者になって欲しい。そして、私もそうなるために、努力し続けたいと思います。」
まさに、「心技体」なのですね。
若い世代に伝えたいことを尋ねると、真剣な眼差しでこう語りました。「高い目標を持ち、前向きに、根気よく、失敗を恐れず取り組むこと。言われた通りではなく、考えて、失敗して成長して欲しい。」
最後に、笑顔の写真を撮らせて下さい!とカメラを向けると、ちょっと照れながらも最高の笑顔を見せてくれました。