MAZDA BLOG
2024.3.19

極寒の大地がマツダ車を育む

 

マイナス25℃の地にある、マツダ試験場

北海道剣淵町(けんぶちちょう)。旭川の北に位置するこの町は、マイナス25℃を下回ることもある極寒の豪雪地帯です。

2,800人が暮らすこの町に、マツダ剣淵試験場はあります。

 

マツダの国内開発拠点の中で最北端に位置し、主に開発車両の雪上走行性能を育成・検証するための試験場です。

毎年、剣淵町の方々に多大な協力をいただいて冬季限定の試験場を開設し、広島の本社だけでなくアメリカ、ドイツの開発拠点からも開発エンジニアが出張して、DSC(ダイナミックスタビリティコントロールシステム)やAWD(四輪駆動システム)など走行機能の育成や、ブレーキやボディなど耐寒性能の検証を行っています。

マツダのもう一つの冬季試験場である中札内試験場では、道東地方の気温が低く晴れが多い気候を活かしたアイスバーン路や圧雪路でABS(アンチロックブレーキシステム)やTCS(トラクションコントロールシステム)の開発を行っているのに対して、剣淵試験場では豪雪地帯ならではの雪の多さを活かし、深雪や融雪など様々な路面状況での性能検証が行われています。

 

“生きたテストコース”でクルマを鍛える

マツダの開発エンジニアたちは、走行テストを重ねてクルマの性能をより良くしていくことを「育成」や「鍛える」とも呼びます。そこには愛情に似た願いが込められています。

 

取締役専務執行役員兼CTO 廣瀬 一郎

私たちは、クルマを単なる工業製品だと思っていません。開発の過程で成長し、昨日より今日はたくさんのことができる。今日より明日は一層安心安全になる。そうやってクルマに日々強靭になってほしいという意味を込めて、みんな「鍛える」という言葉を使っているのだと思います。

クルマを「鍛える」場として、剣淵試験場は最高の環境です。

というのも、一般的に自動車会社の試験場は専用に作られ、人工的に設計された広いコースであることがほとんどだからです。

しかし剣淵試験場のコースは、夏は林道として町の人が使う “生きた道”。

幅は狭く自然のうねりに富んでおり、まさにユーザーの走行する環境そのものです。

 

この過酷な雪道を時には100km/hを超える速度で走り、ブレーキやサスペンション、エンジン、駆動系、そして制御システムの検証を重ねることで、グリップの低い雪上でのハンドリング性能や走破性をつくり込んでいます。

 

さらに極寒の気温下でのブレーキやヒーター、カメラの視界など、クルマの安全に関わるすべての安全性能が日々鍛えられています。

 

この町で育まれたクルマが、世界を走る。夢があるじゃないですか。

 マツダと剣淵町とのつながりのスタートは、実に1984年まで遡ります。

かつて、マツダの冬季試験に決まった試験場はありませんでした。キャラバン隊のように北海道を転々とする“根なし草”の開発チームが、試験場を開設する場所を探していたところ、大のマツダファンだった当時の大澤町長からぜひ剣淵にと声をかけていただいたところから、剣淵試験場の歴史が始まりました。

それ以来40年、マツダのクルマはずっとこの剣淵で鍛えられています。

 

 

剣淵町のテストコースは自然の中を走る林道のため、倒木もあれば野生動物の侵入もあります。そのようなときも、寒地テストコースのメンテナンスをサポートいただいている剣淵町の方々に丁寧な対応をしていただいているからこそ、テストコースとして運用していくことができるのです。生きたテストコースは、地元の方々の協力があってこそ成り立っています。

 

 

町長 早坂 純夫様

マツダが剣淵町でテストしている、これは私たちの自慢です。ぜひ協力していきたい。だって、剣淵で育まれたクルマが、世界中を走っている。これは夢があることじゃないですか。マツダの方とこの町の人間は距離感も近く、家族ぐるみの付き合いも多いので、子どもたちにもマツダの存在は深く浸透していると思います。

私の子どもなんて、自動車部品メーカーに就職しましたからね。きっとマツダがこの町に存在することも理由の一つなんだと思います。

 

1,300kmの距離を越えて、つながり続ける


 広島のマツダ本社と1,300kmも離れた剣淵ですが、距離を感じさせない機会があります。それは剣淵試験場に町の方々を招待し行われる、30年以上にわたって年に一度行われてきたイベントです。

今年は「MAZDA OPEN DAY2024 IN KEMBUCHI」という名前で2月に開催され、マツダ車の雪上性能体験やゲームコンテンツ、道の駅での広島物産展の同時開催など、様々な楽しめる工夫で彩られました。

人口2,800人の町ながら試験場には300名近い人々が訪れ、テストドライバーが運転するテスト車両での高速同乗体験や雪上ジムカーナ大会、RC体験、そして雪上ドリフトデモンストレーションなど、子どもから大人まで多くの方々にマツダブランドに親しんでいただけるイベントとなりました。

 

<MAZDA OPEN DAY 2024 IN KEMBUCHIダイジェスト動画(3:12)>

 

来場されたお客さま

このイベントが楽しみで、毎年来ています。マツダのロードスターを買ったことをきっかけに北海道のみならず、全国に友達ができました。

マツダのクルマは本当にコミュニケーションツールです。実は、妻との出会いもお互いロードスターに乗っていたことがきっかけでした。

 

 

試験場で管制員として働く剣淵町民の渡邊さん(株式会社 寒地技研)

 

生まれも育ちも剣淵町です。高校生の頃からこのイベントには来ていて、剣淵のみんなにとって毎年楽しみな一大イベントです。社会人になってしばらく経ってから、「あの剣淵試験場で働ける」という話を聞き大喜びで手を上げて、今働かせていただいています。わたし冬が嫌いだったのですが、働き始めてからはマツダの皆さんがやってくる冬が待ち遠しくなりました。

 

剣淵町とのお付き合いが始まったのは1984年。それから実に40年ほど、町の営みとマツダ試験場でのクルマづくり、それぞれのストーリーが並行して折り重なってきました。単なる試験場の所在地ではなく、人と人の深い部分で、この町とマツダは濃くつながり続けています。

 

今日もこの剣淵試験場で鍛えられたマツダ車が世界中で走っています。

カテゴリー:ストーリー , イベント