【ソウルレッド】エンジニアが語る「量産化」への挑戦〜後編
圧倒的な存在感を表現する「鮮やかさ」と「陰影感」を両立した「ソウルレッドプレミアムメタリック」。この「こだわりの赤」を量産に導いたエンジニアとカラーデザイナーが語る「ソウルレッドの量産化への挑戦」の後編をご紹介します。
前編では、職人がこだわり抜いた繊細な色を、機械で塗り上げる難しさや、デザイナーとエンジニアが共同で開発した5年を超える道のりを掲載しました。
「ここまでの情熱が込められているとは」「エンジニアに敬意を払いたい」「次の愛車はソウルレッドを買います」など、嬉しいコメントを多くいただきました。
今回の後編では、「究極の赤」の実現に立ちはだかった壁や、それに挑んだ「飽くなき挑戦」を紹介します。
光学特性を用いて磨きぬいた「究極の赤」
ソウルレッドでは、アルミフレークを規則正しく配置した反射層の上に、鮮やかに発色する透過層を配置することで、陰影感と立体感の両立を狙いました。
「『どのくらいの大きさのアルミフレークを、どんな角度で並べたら狙い通りの光の反射になるか』や『透過膜に入れる顔料の量や膜厚を、どうすれば狙い通りの着色ができるか』など、鮮やかさと深みを両立させる塗膜構造を、光学特性を用いて分析しました。これら一つ一つの要素をデザイナーと確認しながら、丁寧に決めていかなくては、ソウルレッド特有の色合いがでてこなかったのです。」そう語るのは、塗装一筋のベテランエンジニアである篠田さん。
そして、この「究極の赤」の量産にあたり、まず着手したことが色味の数値化。「鮮やかさとは?」「深みとは?」デザイナーが感性で磨き上げた色味を数値化することで、技術的な目標値を明確にしたのです。新色開発の性能検証を担当し、さまざま色を量産へ結びつけてきた久保田さんは、こう語りました。
「膨大なサンプルを確認し、光学特性をとりながら地道にマッピングしました。普通なら、『鮮やかさ』を上げると『陰影感』は下がる。ソウルレッドは、その両方を極めるわけですから、通常のやり方ではできない。そこでまずは、デザイナーの感覚に合う数値を明確にすることで、デザイナーとエンジニアが同じ目標に向かって突き進むことができたのです」
量産化実現のカギは「基盤技術」
「反射層と透過層の2層構造」、言葉で言うのは簡単ですが、生産工程や製品としての機能を考慮すると、かなり技術的に難しいことでした。そんな技術的に難しいことが、なぜ実現できたのでしょうか?実は、マツダが長年取り組み続けた、革新的な塗装技術がカギをにぎっていたのです。
「マツダは、これまで様々な塗装技術の革新をしてきました。2002年から行っている「スリーウェットオン塗装」や、2009年からは「アクアテック塗装」という新しい技術を確立しました。これらの技術によって、塗膜の一つ一つの機能を分解し、各機能の分担や集約を研究してきました。今回は、これらの機能分担を「色」に応用したのです。」
「正直、これまで培ってきた革新的な技術の蓄積がなければ、ソウルレッドを量産化することは出来なかったと思います。長年にわたり諦めずにアルミの配向技術や塗装の基盤技術をきちんとやってきたというところが大きかったでしょう」
職人の塗り上げる質感を再現した「匠塗TAKUMINURI」
このようにして培ってきた基盤技術のもと開発されたのが、高精度な塗装技術「匠塗TAKUMINURI」。職人が時間をかけて塗り上げる質感をロボットで、どう再現したのでしょうか?
「職人の場合は、塗った結果を見て何度も微妙な調整をしながら塗り重ね、相当な時間をかけて仕上げていく。だから、職人と同じことをロボットに真似させてもダメなのです。職人が何を感じて、何を調整しているのかを分析し、それをロボットの軌跡にどう置き換えるべきか、何度もシミュレーションによる膜厚分布を取りながら最適化していきました」
この写真は、塗装ロボットの動作プログラムに膜厚の形成シミュレーションを織り込み分析している様子です。白は未塗装、塗り重ねることによって青⇒黄⇒赤と膜厚が厚くなっていきます。すべての部位が狙いの膜厚(赤)になるようにプログラムを最適化するのです。
「特に難しいのは、各パーツのエッジ部分。例えば、ドアとドアの間や、ボンネットの先端部分などです。物理現象として、エッジには塗料が集まり、膜厚が厚くなります。私たちはここを「額縁」と呼んでいて、常に頭を痛める部位なのです。そんなエッジ部でも、均一に色を発色させるべく、塗布する角度や順序、そして、塗料を止めるタイミングなどを、パーツごとに設計し直しました。正確な位置とタイミングで塗り始め、塗り終える制御システムも新しく開発したのです」
人をドキッとさせる強烈な鮮やかさと、深みのある陰影感
「走っている姿を見ると、思わず振り返ってしまう、そして、遠くに停まっていても、人の目を引き付けるクルマをつくりたかったのです。そんな想いで磨き上げたソウルレッドは、CX-5・アテンザ・アクセラが採用しているデザインテーマ「魂動(こどう)─SOUL of MOTION」の躍動的な立体造形にのせると、さらに映える色なのです。まさに、『色も造形の一部』ですね。」
こう語るのは、コンセプトカーにおける「色の作り込み」も長年手がけてきたカラーデザイナーの細野さん
「ソウルレッドは、テストピースで見るより、クルマで見るほうが、ずっとカッコいいのです。最初に塗装されたクルマを見た時の驚きは忘れられません。みんなで「すごい!」と感動したのを鮮明に覚えています」
「現在、ご購入いただいている新型アクセラの20%以上がソウルレッドだと聞いています。私たちが培ってきたデザインや技術の全てを注ぎ込み、今やれることを全部やった『究極の色』です。これで終わりという訳ではありませんが(笑)」
「角度や時間帯によって、様々な表情を見せる色なので、乗るだけでなく、クルマを見て、楽しんで欲しいと思います。まだまだ、やりたいことが沢山あります。これからも、「どきっ」としていただける色を追求したいですね」
そう語り合う三人の輝く瞳が印象的でした。
街角でソウルレッドを見かけたら、是非、色んな角度でその表情の違いをチェックしてくださいね^^
また、昨年掲載しました「カラーデザイナーが語る『赤』へのこだわり」では、なぜ「赤」を選んだのか、そして、歴代デザイナーに脈々と受け継がれてきた「赤への想い」をご紹介しています。
▲カラーデザイナーが語る『ソウルレッド』へのこだわり
前編 https://blog.mazda.com/archive/20130516_01.html
後編 https://blog.mazda.com/archive/20130523_01.html
▲「エンジニアが語る『量産化』への挑戦〜前編」
https://blog.mazda.com/archive/20140108_01.html