ドライバーの「見えやすさ」への妥協ない追求 ~アクティブドライビングディスプレイ編
突然ですが、エンジンをかけると、運転席の前に現れる半透明のパネル!
もう体感されましたか?
その名も「アクティブドライビングディスプレイ」。
ドライバーの「わき見」によるリスクを最小限に抑える優れものです。視覚を邪魔せず、安全運転に必要な情報をドライバーに伝えることは、とても大切!
このアクティブドライビングディスプレイでは、ドライバーの前方視界に、車速やナビゲーションのルート誘導など、走行に必要な情報を表示します。さらに、これらの情報はドライバーの約1.5m前方に焦点を結んで見えるので、視線の移動と目の焦点調節が少なくて済むのです。
「安全に、走る歓びを楽しんで欲しい!」その想いを追求し続け、開発に没頭するエンジニアの姿をご紹介します。
わき見運転によるリスクを最小限に抑えるために
ドライバーは、通常約20m先前方を注視しながら運転していると言われています。
そして、運転中にメーターやナビゲーションに目を向けることはいずれも「わき見」行為。
この「わき見」によるリスクを最小限にすべく、「アクティブドライビングディスプレイ」の開発は2011年にスタートしました。お客様の多様なご要望に応えながら、いかにドライバーの視界を妨げることなく、必要な情報を表示するか、何度も議論を重ねました。
「開発プロジェクトのスコープは国内だけではありません。全世界のマツダユーザーに安全な運転を提供したい。そんな想いで、アメリカやヨーロッパなど海外拠点のメンバーと一緒になって、開発に取組みました。」
アクティブドライビングディスプレイの開発に携わった車両開発本部の岡田 健治(おかだ けんじ)さんはこう開発を振り返ります。
視覚を邪魔せず、厳選した情報を明確に
開発にあたり、まずはドライバーの目の高さを、性別や体格などに応じて分類。通称“アイレンジ”と呼ばれる手法を使い、ほぼ全員に近いドライバーの視認性を確保できる位置を検証しました。さらに、どんな体格のドライバーにも最適なパネルサイズを追求し、パネルの高さや幅には、一切の妥協を許しませんでした。
また、せっかく表示した情報がドライバーを迷わせては逆効果ですよね。
刻一刻と変わる走行状況に対して、必要な情報を視界を邪魔せず「厳選して」表示することが大切です。
そのために、文字の表示方法にもこだわり抜いています。どんな色であれば視認性が確保できるのか?先行車と重なり見えにくい位置ではないか?文字サイズは最適か?など、検討に検討を繰り返しました。
開発は試作と失敗の連続
「試作品を何度も作り直し、その精度を追求。机上では成り立っていても、実車に搭載すると、フロントガラスのワイパー払拭エリアに表示が入らなかったり、日本人の目には視認性のよい表示の明るさが海外の方の目には合わなかったり。海外の様々な気候の下で実際に計測し、ドライバーの視認性を何度も検証しました。」
開発に携わった車両開発本部の中島 英信(なかしま ひでのぶ)さんは語ります。
「また、パネルの調節角度にもこだわりました。シート位置をドライバーに合わせて調節できるように、パネルに表示される文字位置も、ドライバーのアイポイントによって調節できます。
その調節幅が、パネル移動角で「0.32度が最適」であることを突きとめました。さらに、その作動誤差も0.05度以下を確保しました。」まさにコンマの世界ですね。
コストを最小限に抑えて、一人でも多くの方にその価値を感じてもらう
このアクティブドライビングディスプレイを初めて搭載したのは2013年に発売した「新型 アクセラ」でした。その後、アテンザ、デミオ、CX-3と導入を進めました。実は、この他車種への展開は比較的スムーズだったのです。なぜなら、アクセラのヒップポイント(お尻の位置)がこれらの車種の中でも一番低い位置だから。つまり、一番視認性の確保において、工夫が必要な車種でしっかり検討し尽くしていたので、スムーズに他車種に応用できたのです。
さらに、とても重要なことが!
どんな素晴らしい機能でも、高額では幅広いユーザーの方にご満足いただけません。
そこで、一人でも多くのドライバーにその良さを感じてもらうために、ユニット開発にかける投資、部品コストを最小限に抑えることにも注力しました。
一度開発したユニットを、複数車種にも展開できるように設計。そうすることで、他社ではプレミアムと呼ばれるクラスでの車種、しかもオプション装備で設定されているシステムも、マツダでは、2013年以降に発売されたアクセラ、アテンザ、デミオ、CX-3に搭載しているのです。
クルマに乗る歓び、驚きを与えるのが、エンジニアの究極の喜び
「開発当初からのテーマ『わき見行為によるリスクを最小限に抑えてドライバーの安全を確保』。
これを、今後も突き詰めていきます。ドライバーがハンドルを握るたびに、ワクワクするような驚きを感じてもらえるよう、細かい表現にも改良を重ねていきたい。」
そう語る二人の瞳は、お客様にさらなる歓びと驚きをお届けしたいという夢に満ちた少年のような輝きを放っていました。理想への追求、そして、夢へのチャレンジはまだまだ続きます。