安心・安全なクルマ社会の実現に向けた新技術 ~マツダのドライバー異常時対応システム(DEA)とは~
マツダは、「人が自ら運転することは、心と体を元気にし、自由に移動できることが生き生きとした生活に繋がる」と信じています。
社会の安全を守りながら、個々人の運転の楽しさと自由な移動を生涯にわたり支援し、お客さまの生活や生きがいを守っていきたい。
そうした社会を実現するための安全技術の一つとして、ドライバー異常時対応システム(DEA)は誕生しました。
このブログでは、DEAの概要と、開発の背景についてのインタビューをお届けします。
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1. ドライバー異常時対応システム(DEA:Driver Emergency Assist)とは
クルマの安全性能の向上に伴い、死亡重症事故件数は減少している一方で、安心・安全なクルマ社会の実現にはまだ多くの課題があります。
例えば、体調急変による事故は年々増え続けています。
保有台数1万台あたり死亡重症者数(国内乗用車)
発作・急病に起因する交通事故件数
特に近年、高齢ドライバーの疾患・体調急変による重大事故が先進国で大きな社会問題になっていますが、体調急変は、年齢にかかわらず誰にでも起こりうるものです。
そして、急な体調変化による事故のほとんどが時速60キロ以下、つまり私たちが生活している一般道で起きているというデータもあります。
発作・急病事故時の認知速度
このような社会課題を解決する技術の一つとして、マツダのドライバー異常時対応システム(DEA)は開発されました。
DEAは、ドライバーの体調急変などの異常を検知した際、ドライバーの様子に合わせて運転支援を行い、運転が継続できないと判断される場合には速やかに減速して車を停め、自動で緊急通報まで行うシステムです。
STEP1
クルマは常にドライバーの状態をモニタリングし、ドライバーの様子に合わせ運転支援を起動します(スイッチを入れる必要はありません)。
ドライバーの異常を検知すると、ドライバーにアラームで知らせると同時に、ハザードを点滅させ、まもなく緊急停止することを同乗者と周囲に知らせます。
STEP2
「ドライバーが運転に復帰できない」とクルマが判断すると、ハザード点滅に加えて、ブレーキランプを点滅させながらホーンを鳴らし、周囲に異常を知らせながらクルマを減速し安全に停止させます。
(※高速道路において、左に路肩のある車線では、路肩に寄せながら減速停止します。その際、ナビゲ ーション用SDカードが挿入されている必要があります)
STEP3
自動で外部に緊急通報(マツダエマージェンシーコール)を行います。
(※緊急通報には別途、10年間無料で使用できるコネクティッドサービス契約が必要です)
ドライバーの異常を検知する
「ドライバー・モニタリング」の仕組み
このDEAは、昨年国内で発売されたCX-60に採用されています。
高速道路や一般道を問わず、ドライバーが急病などで運転できないとクルマが判断した場合に、クルマを減速・停止させることで、事故の回避と被害軽減をサポート。
停車後はドア解錠や緊急通報も行い、早期のドライバー救護・救命につなげます。
(公式YouTube:再生時間 6分)
DEAは、最新の国連協定規則に国内メーカーで初めて対応しており、その先進安全技術が評価され、「2022~2023 日本自動車殿堂 カーテクノロジーオブザイヤー」や「市村産業賞 功績賞」を受賞しています。
2. DEA開発の背景
ここからは、DEAを含む高度運転支援技術の開発をリードした開発戦略企画部主査の栃岡 孝宏に、開発の経緯を聞いてみました。
開発戦略企画部主査
栃岡 孝宏(とちおか たかひろ)
– DEA開発の背景について教えてください。
マツダは「自ら運転すること」を大切にしている自動車メーカーです。
それは、私たち自身がクルマが好きだから、という理由だけではなく、「人は本来、自分の能力や感覚を発揮することに喜びを感じる」という人間の特性を大切にしたいからです。
例えば、スポーツで思い通りの動きができた時や、道具を使って思い通りに加工できた時など、自分の能力や感覚を発揮することで「楽しい」と感じたことはみなさんご経験があるのではないでしょうか。
それと同じように、思い通りにクルマを運転できると、身体が活性化され、結果として心も体も元気になるのです。
マツダは、人が本来持つ能力や感覚を最大限に活用する
「人間中心」の考えを開発哲学としています
運転に興味がない方にとっても、自由に移動できることは生活に彩りを与え、人を元気にします。
ある調査では、運転をやめてしまうと要介護となるリスクが2倍になるというデータが出ており、自ら運転することが心と体の健康維持につながるとも言えます。
だからこそ、マツダは「人が運転する」ことを前提に、
「すべての人がすべての地域で自由に移動し、心豊かに生活できる仕組みを創造したい」
「社会の安全を守りながら、ご高齢の方や体に不安を抱える方、運転が苦手な方でも、移動の自由を諦めることなく皆が活き活きと暮らせる、そういう社会の実現に貢献したい」
と本気で考えているのです。
そして、それを実現するためには、クルマがドライバーの安全な運転を見守ることができるようにしたらいいのではないかと考え、クルマがドライバーの副操縦士のような存在になることを目指したのが高度運転支援技術MAZDA CO-PILOT CONCEPTです。
一人で運転していても、もう一人の優れたドライバーがいつも横で寄り添ってくれている。
ドライバーは心から安心し、自信を持って運転を楽しむこと、自由に移動することができます。
DEAは、このMAZDA CO-PILOT CONCEPTを具現化する最新技術の一つとして開発しました。
常にドライバーの状態を見守り、一般道から高速道まで幅広いシーンで機能することで、ドライバーが原因となる事故の削減、被害軽減に貢献する技術です。
DEAを採用しているCX-60
– マツダが安全領域で目指している提供価値はどんなものですか?
マツダはこれまで、車両のふらつき検知からはじまり、MAZDA3(2019年)で眠気や脇見の検知、そしてCX-60(2022年)から居眠りと姿勢崩れを検知する技術へと、「人を見守る」マツダ独自の先進安全技術を積み上げてきました。
それがこのDEAにつながっています。
マツダは、こうした先進安全技術を一つ一つ進化させていくことにより、ドライバーや同乗者の安心だけでなく、ドライバーを送り出す家族や周囲の人々への安心も提供したいと考えています。
また、自らが安全に運転できることをサポートするこれらの技術は、過疎化による交通サービスの空白化という社会課題にも貢献できると考えています。
過疎地での移動手段の不足という課題に対して、安心していつまでも運転できる技術を提供することで、その人自身の心と体を健康にするだけでなく、その人がドライバーとなることで生き甲斐を感じながら地域の人々の自由な移動の支え合いに貢献する、そんな姿をも実現できると信じているからです。
– 最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
DEAの開発で最も重視したのは「安心感」です。
ドライバーが自信を持って運転できるためには、「安心」を提供することが最も重要で、ドライバーは同乗者や歩行者に「安心」してもらえてはじめて、自ら運転する自信を持つことができると考えています。
今後も、DEAのような、ドライバーが安全に運転できることを見守る技術を継続的に進化させていきます。
運転する方自身が「〇〇したい」「〇〇へ行ってみたい」という前向きな気持ちになれるような、「あなたを見守る、心が通うパートナー」のような存在になれるクルマを提供し、「マツダを選んで良かった」と思っていただけるよう取り組んでいきます。
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■関連リンク
・MAZDA CX-60の安全技術DEA(オフィシャル車種サイト)
・ドライバー異常時対応システムが「市村産業賞 功績賞」を受賞(ニュースリリース)
・ドライバー異常時対応システムに関する最新の国連協定規則に国内初対応(ニュースリリース)
・「MAZDA CX-60」のドライビングポジションサポートとドライバー緊急時対応の技術が 「2022~2023 日本自動車殿堂 カーテクノロジーオブザイヤー」を受賞(ニュースリリース)