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2013.8.22

【魂動をイメージしたイスに込められたモノづくり #2】〜クレイモデラーが込める温もりと魂〜

今年4月、イタリア・ミラノで開催されたデザインイベント「ミラノサローネ」で展示された、魂動をイメージして制作されたイス。
こちらのイスは、単に座る道具としてだけでなく「人と心を通わす事の出来るイス」として、このイベントのために1脚だけ制作されました。
生き物の持つダイナミックで躍動感のある造形と、巧みに計算され研ぎ澄まされた、モノに宿る「魂」を感じていただきたいという思いが込められています。
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磨き抜かれた流麗なフォルム。引き込まれるような高い質感。そして、光と影のグラデーションで魅せる造形の美しさが印象的です。
この美しいイスの脚、どのように制作されたと思いますか?
クルマのデザイン開発では、デザイナーのアイデアスケッチをもとに、クレイ(工業用粘土)を使ってモデルを制作することで開発を進めていきます。実はこの脚は、クルマの開発プロセスと同様に、クレイによる立体造形を行いました。カタチの仕上がりを手で確かめながら何度も修正を重ねていき最終デザイン形状へと仕上げていったのです。
今回は、イスの脚の制作に携わった、クレイモデラーの相川さんに、制作にかけた想いやこだわりをお聞きしました。
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相川さんが担当している業務は、魂動デザインのあり方を具現化するために、イメージを立体モデルに置き換えて表現する“先行開発業務”です。
“人の心を衝撃的に震わせる今までに無い美しいカタチを創ること”を目標に、波・炎・水・チーターなどをモチーフにしたオブジェなどを今まで制作してきました。
そんな熟練の技を持つ相川さんが、今回の制作でこだわったのは、前へ進むスピード感と、後ろ脚でしっかり支える安定感の表現。大切にしたポイントは「リフレクション(光の反射)」と「シルエット」だそうです。
「例えば屋外や部屋の中など、イスを置く環境によってリフレクションやシルエットは変わっていきます。しかしどんな環境でも、きれいな光の線やグラデーションを出したい。そこで自然光や間接照明など、様々な環境で何度も何度もチェックを繰り返して、魂動が醸し出す洗練されたフォルムや陰影の美しさが表現できる脚を創っていきました。」
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制作は順風満帆ではなく、様々な試行錯誤を伴いました。
初めにコンピューターで脚の形状データを作り、そのデータから機械切削で立体モデル(樹脂ブロック)を作り確認しましたが、スケッチに込めたデザイナーの思い『魂動デザイン』がモデルに忠実に表現出来ていないという問題が発生したため、デザイナーと共に究極の美を目指すためカタチを修正しました。
「たとえ微妙な表情の変更だとしても、形状としてはほぼ全面修正する必要があります。そのため立体モデル(樹脂ブロック)の脚形状を90%そぎ落とし、その上にクレイを盛っては削りを繰り返しながら、躍動的な造形を感じてもらえるように洗練させていきました。そして、修正したモデルを再度データに読み込み、改めてアルミの脚を創りだして完成させたのです。」
わずかなカタチの表現も妥協しない、ひたむきな情熱やプライドが感じとれるエピソードですね。
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最後に、今回のイスの制作を通じて伝えたいことを尋ねると、真剣な眼差しでこう語りました。
「イスの制作に携わった全ての人が魂動を忠実に表現することにこだわりぬいて創り上げました。みなさんには、こうしたモノへのこだわりを感じていただきたいと思います。そして、このこだわりを通じて、魂動デザインの本質をお伝えできたら、うれしいですね。」
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「デザイナーが作ったデータをただ単純に削り上げるだけでは、面白みがなく冷たい感じがする。クレイモデラーは、無機質なデータに温もりや魂を入れているのです」と語る相川さん。その言葉と真剣な表情に、魂動デザインに対するあくなき情熱とこだわりを感じました。
次回はイスの脚を磨き上げた職人とそのこだわりをご紹介します。
前回を読み忘れた方は、こちらもご覧ください。
【魂動デザインをイメージしたイスに込められたモノづくりへのこだわり #1】
https://blog.mazda.com/archive/20130613_01.html
◇以下の動画からもマツダの「魂動」デザインを感じていただけます。

こちらのコンテンツは、連載でご紹介しています。

【魂動デザインをイメージしたイスに込められたモノづくり #1】
https://blog.mazda.com/archive/20130613_01.html

【魂動デザインをイメージしたイスに込められたモノづくり #3】〜磨きの職人が追い求めた脚の質感
https://blog.mazda.com/archive/20131107_01.html

【魂動デザインをイメージしたイスに込められたモノづくり #4】~二人の師弟ハードモデラーの挑戦
https://blog.mazda.com/archive/20140507_01.html

カテゴリー:ストーリー