マツダ「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」(2)~マルチソリューションとは?~
マツダが2017年の8月8日に発表した、2030年を見据えた技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」。
ニュースリリース:マツダ、技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」を公表
⇒http://www2.mazda.com/ja/publicity/release/2017/201708/170808a.html
公式ブログ:マツダ、技術開発の長期ビジョン「サステイナブル”Zoom-Zoom”宣言2030」を公表しました。
⇒https://blog.mazda.com/archive/20170808_01.html
本ブログでは改めて、特にマツダの「地球」領域に対する課題解決のアプローチについて、2回に分けて深めにご紹介しています。
第1回の記事はご覧いただけましたか?マツダは、本質的なCO2総排出量削減のために、エネルギーの採掘・製造・輸送段階のCO2排出量までも考慮した「Well-to-Wheel」の考え方を重視し、2030年に向けた取り組みを進めていきます。
ブログ: マツダ「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」(1)~Well-to-Wheelの考え方とは?~
⇒https://blog.mazda.com/archive/20180427_01.html
今回は第2回。Well-to-Wheelの考え方をふまえた、マツダの次世代技術導入プランにおける「マルチソリューション」を中心にご紹介します。「マツダは電気自動車(EV)を出さないの?」「エンジンの自動車ってこれからどうなるの?」など、みなさんの疑問に少しでもお答えする形になれば幸いです。
~おさらい~
■マツダの”地球”領域における課題解決アプローチ
環境保全の取り組みにより、豊かで美しい地球と永続的に共存できる未来を築いていきます。
<アプローチ>
クルマのライフサイクル全体を視野に入れて、「Well-to-Wheel」の考え方にもとづき、本質的なCO2削減に向けた取り組みを本格化します。
「Well-to-Wheel」での企業平均CO2排出量を、2050年までに2010年比90%削減することを視野に、2030年までに50%削減を目指します。
この実現に向けては、地域/国のエネルギー政策や発電構成に応じたパワーユニットを適材適所に展開をするマルチソリューションが必要です。
実用環境下における燃費改善とエミッションのクリーン化の効果を最大化することを方針とします。
この方針にもとづき、今後も世界的に大多数を占めると予測され、CO2の削減に最も効果のある内燃機関の理想を徹底的に追求し、効率的な電動化技術と組み合わせて導入します。
さらに、クリーン発電地域や、大気汚染抑制のための自動車に関する規制がある地域に対して、EVなどの電気駆動技術を2019年から展開します。
マツダの次世代技術導入プラン
まず、マツダの次世代技術導入プランをご紹介します。「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」の実現に向けて、マツダは以下のスケジュールで次世代技術を導入する予定です(図1)。
マツダは、2019年から次世代エンジン「SKYACTIV-X」や「Mild HV(マイルドハイブリッド車)」「BATTERY EV(電気自動車)」を導入します。また、2020年にはディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」の第2世代を、2021年以降には「Plug-in HEV(プラグインハイブリッド車)」も追加する予定です。
SKYACTIV-Xは、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの特長を融合した、新しいマツダ独自の内燃機関(図2)。優れた環境性能と出力・動力性能を、妥協なく両立します。
出力・動力性能においては、圧縮着火によるこれまでにないエンジンレスポンスの良さと、燃費改善目的で装備したエア供給機能の活用により、現行の「SKYACTIV-G」と比べて全域で10%以上、最大30%におよぶ大幅なトルク向上*を実現する見込みです。
また環境性能においては、エンジン単体の燃費率でマツダの2008年時点における同一排気量のガソリンエンジンと比べて35~45%程度の改善*、現行の「SKYACTIV-G」と比べて最大で20~30%程度の改善*、最新の「SKYACTIV-D」と同等以上の燃費率を実現する見込みです。
* 2017年8月時点の、開発段階におけるマツダの測定にもとづく。
内燃機関の将来性
それでは、SKYACTIV-Xをはじめガソリンエンジンやディーゼルエンジンなど、いわゆる内燃機関は今後どうなるのでしょうか。グローバルにおける、自動車のエンジンやモーターなど「パワーユニット」の普及予測は、以下のようになっています(図3)。
これからも、世界の自動車総販売台数は新興国の需要増加も影響し、さらに拡大していくことが予測されています。そのなかで、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなど内燃機関のみを搭載している車両は2020年頃をピークに減少すると見られています。
一方で、「内燃機関と電気デバイス」を組み合わせたハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も含めると、内燃機関を搭載した自動車は2035年においても全体の約84%を占めるであろうことも見ることができます。つまり、まだまだベース技術である内燃機関の需要が高いことが予測されているのです。
マルチソリューションとは?
「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」で見据える2030年時点においても、まだまだ内燃機関の需要は高いと考えられます。また、Well-to-Wheelの考え方でもご紹介したとおり、電気自動車やプラグインハイブリッド車に必要な電気を供給するための発電構成比(自然エネルギー、原子力、石炭・石油などの火力)は国や地域によって異なることも考慮する必要があります。加えて、各国の「規制」や、お客さまがクルマを都市部中心に短距離移動として利用するのか、旅行など荷物をも搭載して長距離で利用するのか、など「使用用途」に応じても幅広く対応する必要があります。
これらをふまえ、マツダは内燃機関や電動化技術などパワーユニットの展開を適材適所で行う「マルチソリューション」により、地球環境の課題解決に取り組もうと考えているのです。
マルチソリューション実現のための技術戦略
それでは、マルチソリューションの実現に向けて、マツダはどのような技術戦略で臨むのか。それが「ビルディングブロック戦略」(図4)となります。
ビルディングブロック戦略とは、まずクルマの基本性能となるエンジンやトランスミッション、ボディ、シャシーなどの「ベース技術(SKYACTIV技術)」を向上させます。さらに「電気デバイス(アイドリングストップシステム、減速エネルギー回生システム、ハイブリッドシステムなど)」もベース技術として組み合わせます。これにより、一部のパワーユニットや車種に大きく依存することなく、世界中のお客さまにも手の届きやすい価格で、環境・安全性能に優れたクルマを提供することが可能となります。
その上で、さらにBattery EV TechnologyやPlug-in HEV Technologyを組み合わせることで、さらなる環境への貢献を図ることができるのです。
電動化のメリットは?
それでは、自動車において「電動化」するメリットとは何でしょうか。以下(図5)にパワーユニット毎の特性を、簡単にまとめてみました。
電動化のメリットとして、例えば減速時の運動エネルギーを無駄なく電気エネルギーとして回生(再利用)できることが上げられます。ハイブリッド車では回生により備蓄した電気エネルギーを、エンジンの熱効率が悪くなる低回転域でモーターの動力源として利用することで、さらなる燃費向上が図れます。エンジン回転数などを考慮した上で、エネルギー出力に関する制御を細かく調整できるため、さらなるCO2排出量削減が可能となるのです。
ちなみに「電動化」「電動車両」と言っても、「電気をエネルギー源とすること」の総称とすることが多いようです。つまりは、「電動車両」が「電気自動車のみ」に限定されない表現です。世界各国で「電動車両の拡大を目指す」話題が見られますが、これらも同様の例が多いと考えられます。先ほどの図3で示したとおり、内燃機関を活用したハイブリッド車やプラグインハイブリッド車は、今後さらなる拡大が見込まれています。
おわりに
マツダは真に地球環境に貢献するためにはライフサイクル全体でCO2排出量(Well-to-Wheel)を考え、各国の政策や発電構成に適材適所に対応できること(マルチソリューション)が大切だと考えています。ベース技術と電気デバイスを組み合わせ、各市場に応じたパワーユニットを持つ車両を展開することで、「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」の達成を目指します。そして、何よりもクルマをこよなく愛し、走る歓びを大切にするお客さまと共に、豊かで美しい地球と永続的に共存できる未来を築いていきます。
以上、マツダの「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」、特に「地球」領域に対する課題解決のアプローチについて、一層のご理解が深まったのであれば幸いです。マツダの次世代商品にも、どうぞご期待ください!
ご読了、ありがとうございました!!
■動画:マツダ 技術開発長期ビジョン説明会
■動画:次世代ガソリンエンジンSKYACTIV-X: 技術イントロ映像
■動画:次世代ガソリンエンジンSKYACTIV-X: SPCCI
(SPCCI: Spark Controlled Compression Ignition 火花点火制御圧縮着火)