MAZDA BLOG
2023.9.29

2種類のカーボンニュートラル燃料をレースで使い、実証実験にチャレンジ

7月29-30日、カーボンニュートラル燃料車「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER CNF concept」が、オートポリスサーキット(大分県)で行われたENEOSスーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTON第4戦に初参戦し、5時間の耐久レースを完走しました。同車は、排気量2.0LのSKYACTIV-Gガソリンエンジンを搭載。燃料には、ガソリン代替のカーボンニュートラル燃料が使われています。

これまでマツダは次世代バイオディーゼル燃料を使用する「MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept」でスーパー耐久シリーズに参戦してきていますが、これに加えてガソリン代替のカーボンニュートラル燃料にも取り組む、新たな挑戦の始まりです。

マツダがなぜレースの場でカーボンニュートラル燃料の普及に向けた実証実験に取り組むのか、今回のブログではガソリン代替のカーボンニュートラル燃料に関わる取り組みを紹介します。

MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER CNF concept

 

化石燃料を使わず、合成燃料でカーボンニュートラルをめざす

今回のレースで、カーボンニュートラル燃料車の走行時のデータ収集やエンジン制御プログラムの設定を担当した、エンジン性能開発部 主幹の山口直宏(やまぐち なおひろ)に話を聞きました。

 

― ガソリンに代えて使用するカーボンニュートラル燃料とはどんな燃料ですか?

化石燃料に非常に近い、人工的に作った合成燃料です。
一般的には、大気中から回収したCO2と、風力や水力などの再生可能エネルギー(電力)を用いて生成したH2を用いて、これらを人工的に合成した炭化水素化合物の合成燃料になります。

もちろん、作る過程でCO2は排出されません。大気中のCO2を回収して燃料を作ることから、カーボンニュートラルであると言えます。

マツダは再生可能燃料の普及を目指す利益共同団体「eFuel Alliance」に加盟。未来のカーボンニュートラル燃料として、バイオ燃料、電気分解された水素を使うe-Fuel、水素などの可能性の研究を進めています。

 

 マツダがガソリン代替のカーボンニュートラル燃料でレースに参戦することになったきっかけは?

トヨタさんからスーパー耐久シリーズレースへの参加の呼びかけがあったことがきっかけでした。マツダもカーボンニュートラル燃料の研究をしていましたので、良いタイミングで声をかけていただきました。

カーボンニュートラルというと電動化技術が注目されてマツダも商品化を進めていますが、エンジン搭載車でカーボンニュートラルを可能にする方法はあると考えています。そのひとつが今回のレースでも使用している合成燃料です。今回のレースで使っているガソリン代替のカーボンニュートラル燃料は、トヨタさん、スバルさんがスーパー耐久シリーズで使用しているものと同じ海外製のものです。

ピットではドライバー交代とタイヤ交換、給油が行われる

 

また、エンジンは、市販されているものをベースに変更を加えています。カーボンニュートラル燃料の成分に合わせて最適な燃焼特性にするため、エンジン制御プログラムを変更してさまざまな制御適合を行っています。レースでは日常生活の走り方とは異なる高回転で走り続けるといった条件での実証実験データが得られています。

もちろん事前にレースを模擬した条件で台上試験を行い、特別なエンジン制御プログラムを設定して参戦していますが、実際のレースでは3名のドライバーが交代で運転するためそれぞれアクセルワークなども異なるなど、現実のレースならではの様々な状況で走ったデータを得られています。

(左から)山口、レース用エンジン担当の小林達也、藤山智彰

 

― カーボンニュートラル燃料が普及するようになれば、従来のエンジンを載せたクルマでもカーボンニュートラルを実現できますか。まだ課題があるのでしょうか。

 

将来のクルマについてはEVを中心に報道されているイメージがありますが、最近、カーボンニュートラル燃料も注目を集めています。特に、欧州では若干価格は高めですが軽油代替のHVO(Hydrotreated Vesetable Oil)燃料が一部のガソリンスタンドで販売されるようになっています。

さらに欧州では車以外にも航空機の代替燃料として合成燃料が検討されているようです。

一般ユーザーが所有するクルマでのカーボンニュートラル燃料の利用にあたっては、国によって異なる法規や価格その他の課題もあります。

実は現在市販されているガソリンも各国で成分に違いがあります。例えばブラジルなどすでにバイオエタノールを実用化している国では燃料にバイオエタノールが混ぜた燃料が販売されています。含有率などに合わせた部品や燃焼制御が必要になるので、世界中で売られている車は、見た目には同じエンジンを載せた車であっても同じ仕様ではありません。市場に合わせた仕様です。

国内仕様のマツダ車の部品は、海外仕様の部品と共通化されている部分があり、すでに多くがE10(エタノール含有10%)対応レベルになっています。日本でも、こうした燃料の一般販売がガソリンスタンドなどで可能になると、100%カーボンニュートラルな燃料でなくても化石燃料の使用を減らせる効果があると思います。

各種計測センサーが取り付けられた台上試験室のエンジン

 

また今回のレースで使用したガソリン代替のカーボンニュートラル燃料の実用化にあたっては、今後課題を洗い出し、燃料の特性を見極める必要があります。例えば、燃料が気化しにくい蒸留特性だと気筒内に付着した燃料の一部がエンジンオイルに混ざるなどしてオイルが希釈され、オイルの粘度が低下して潤滑性能に影響が生じます。これはエンジンを傷めることに繋がります。レースでは高負荷での実証実験を行っていますが、例えば寒冷地でエンジンが温まっていないようなケースでの使用状況なども今後調べていきたいと思っています。

今回3社が同じカーボンニュートラル燃料を使うということで、実用化に向けてのよいデータが取れる可能性があると感じています。燃料を作っていただいている会社にも、より望ましい燃料特性の提案ができるようになるのではないかと考えています。

エンジン性能試験施設でデータ確認中

 

― レース期間中はどんな仕事をしているのでしょうか?

予選や本戦が始まる前の、練習走行の時がメインになります。

エンジンの制御データを計測して確認し、想定通りの出力で走れているのか、各種デバイスは異常なく作動しているのか、異常燃焼(ノッキングなど)は生じていないかといった確認を取るとともに、ドライバーの声を聞いて反映できる部分は制御反映を実施します。

また、クラッシュの際には、エンジンやミッションへのダメージが無いかを確認し、必要な部品交換箇所を特定してカーマネージャーを通じてメカニックへ指示を出します。

レース中の不具合に対しては、制御プログラム対応で対策できる部分は即座にその場で対応しますし、レース後は、走行データを分析し、次のレースに向けた改善ポイントを特定していきます。

また、カーボンニュートラル燃料はエンジンオイルの希釈が多いため、レース前後のエンジンオイルをサンプルして調査し、必要な情報収集を行っています。

 

― 環境に配慮した燃料では性能が下がったりしませんか?

今回のロードスターのSKYACTIV-G 2.0をベースにしたエンジンはレース用に一部仕様を変更しています。市販されているエンジンでは最高出力184PS(135kW/7,000rpm)ですが、レース用に200PSまでパワーアップしています。吸気管の内面を磨きスムーズな空気の流れを作って充填効率を高める、高回転カムの採用、排気系のチューニングなどによる馬力向上です。他にも練習走行などでレーシングドライバーから様々な要望が出たものに、制御プログラムを変更して対応しています。

運転の楽しさはマツダとして大事な部分なので、こうした改良もできるところは量産車に反映していきたいと考えています。実は普段の業務ではレースだけを担当しているわけではなく、量産モデルの開発も担当しています。バイオディーゼル燃料で参戦するMAZDA3も今回のレースでもずいぶん早くなってきています。環境技術に対応しても運転の楽しさや性能は損ないたくないですね。

メンバーもSKYACTIV技術の開発経験があるので、厳しい排ガス規制や難しい課題が出てきても何とかしてやろうという気持ちで取り組んでいます!

 

<MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER CNF conceptの特徴>

エンジン:
吸気系チューニング、制御設定の最適化
・SKYACTYV-G 2.0L 出力アップ仕様(7.5%UP)
・シリンダーヘッド 吸気ポート加工
・排気カム変更(開弁角拡大)
・カーボンニュートラル燃料適合および制御最適化
トランスミッション:
Normalギヤ、Normalクラッチ
車体:
1.5Lエンジン搭載車をベースに2.0Lエンジンを搭載するための改造

 

― カーボンニュートラル燃料車の実証実験。この取り組みで面白いところは?

「共に挑む」を意味するステッカー『共挑』が、トヨタ、スバル、日産、ホンダ、マツダのST-Qクラス参加車両すべてに貼られています。

量産車の開発では開発研究を自社内だけで行うのが普通ですが、レースというオープンな場で各社と意見交換しながら、またサーキットで競いながら進めるというのは新鮮な体験であり、楽しんでいます。カーボンニュートラルに向けた開発状況をアピールする場にもなっていてユニークです。

カーボンニュートラル技術の実用化を意識した実証実験ですので、レース以外の例えば冷間時低負荷の条件下などの使用条件での走行データなどにも関心があり、レース以外でも各社と共に連携しながら進められたら面白いと思っています。今後のレースでの記者会見の場などでも機会があれば実証実験の進捗や評価をお話ししていきます。楽しみにしてください。

 

MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER CNF conceptがデビュー戦で完走

ENEOSスーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTON第4戦のレース前日にトヨタ、スバル、マツダの共同記者会見を実施。マツダからは、MAZDA SPIRIT RACING代表 前田、他が参加して今後のMAZDA SPIRIT RACING ROADSTER CNF conceptの開発の方向性を説明しました。

記者からの質問に答える場面ではGAZOO Racing パワートレイン開発の小川主査とSUBARU Team SDA Engineeringの本井雅人監督も同席し、カーボンニュートラル燃料普及に向けた共同開発に関わる部分の説明もあり、カーボンニュートラルに共に挑戦していく姿勢を示しました。

トヨタのGR86は1.4リットル直列3気筒直噴ターボエンジン、スバルのBRZは2.4リットル水平対向4気筒自然吸気エンジン、マツダのロードスターは2.0リットル直列4気筒自然吸気エンジンと、排気量やエンジンレイアウトの違いがあり、その分様々なデータが多く集まります。同じカーボンニュートラル燃料でもどのような違いが出るのかなど、研究開発を進めていく上でも参考になります。

共同会見でのイメージ画像

 

今夏、初参戦のMAZDA SPIRIT RACING ROADSTER CNF conceptが走り出した。

練習走行でクラッシュし予選を走れなかったものの、修理が間に合い決勝は最後尾からのスタート。

最後尾からスタートした後は順調に周回を重ねていく。

ST-Qクラスへの2台目の参加となったが、バイオディーゼルでシリーズ初戦から参戦しているMAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptとともに完走を実現。

 

次世代バイオディーゼルも新たな燃料にチャレンジ

 

MAZDA SPIRIT RACINGチームの今年のスーパー耐久シリーズ参戦目的は、
「耐久レースという極限の実験場でカーボンニュートラルに向けた、自動車の新たな選択肢創りにTeam Japanで挑戦する」こと。次世代バイオディーゼル燃料を使用してシーズン当初から参戦、実証実験を行ってきています。

9月2-3日にモビリティリゾートもてぎ(栃木県)で行われた第5戦では、すでに欧州市場で市販され普及しつつあるNESTE社製のHVO燃料を新採用。このHVO燃料を使用してディーゼルエンジンを搭載するMAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept(55号車)を無事レースで完走させました。

HVO燃料とは、水素化処理植物油と言われています。今シーズンは初戦から第4戦までのレースではユーグレナ社の廃食油などから作られたHVO燃料を使用。ほとんどの成分が軽油に含まれるものと同じですが、配分が異なるため実証実験を行ってきました。

カーボンニュートラル燃料の普及には、燃料製造・供給側パートナーと、燃料活用・需要側のパートナーが連携し、需給一体となってサプライチェーンを構築する必要があります。HVO燃料に対する長期の品質保証に繋げるため、マツダでの実証実験はレースでの過酷な条件下だけでなく、欧州市場の一般車でも実施しています。

マツダはサステイナブルなアプローチで、一貫性のある走る歓びのメッセージとともにカーボンニュートラルを追い求めます。そして、参加型モータースポーツ支援するとともにモータースポーツ活動の活性化に寄与したいと考えています。

 

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