24時間レースでのカーボンニュートラル社会に向けた挑戦
日本にも24時間レースがあることをご存知ですか?
世界の三大24時間レースといえばスパ・フランコルシャン(ベルギー)、 デイトナ(米国)、そしてマツダが1991年に日本車初の総合優勝を果たしたルマン(フランス)です。そのルマン24時間レースは今年6月に100周年記念大会として開催されました。
そんな24時間レースが日本国内でも行われています。
その舞台は今年32回目を迎えた「ENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE」の中のひとつのレース。
今回のブログでは、今年5月に開催されたスーパー耐久シリーズ2023* 第2戦の「NAPAC富士SUPER TEC 24時間レース」におけるMAZDA SPIRIT RACINGの挑戦を中心にモータースポーツの取り組みをご紹介します。
* ENEOSスーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE
スーパー耐久シリーズは、1990年に発足した「N1耐久シリーズ」が前身で、1991年にはじまった市販量販車をベースとした日本発祥、日本最大級の耐久レースとして歴史を重ねています。今日までプロドライバーとレースをライフスタイルの一部とするアマチュアドライバーが共に協力し合い、競い合うモータースポーツです。
目次
MAZDA3とロードスターで24時間レースに挑戦
スーパー耐久レースは、全国のサーキットで年間7戦が開催される国内屈指の人気のある耐久レース。多くは3時間から5時間で行われますが、富士スピードウェイでは国内唯一の24時間レースを開催。また市販車に近い改造範囲のコンパクトカーからGT3等の本格レースカー、または自動車メーカーの試作車(カーボンニュートラル燃料車など)などがクラス分けされて一緒に走り、参加ドライバーもプロからアマチュアまで幅広いことでも知られています。
5月26-28日に行われた第2戦「NAPAC富士SUPER TEC 24時間レース」で、マツダは2つの取り組みを行っています。ひとつはバイオディーゼル燃料を使用する「MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept」での参戦。カーボンニュートラル次世代バイオディーゼル燃料の普及のための実証実験でもあり、走る歓びのための挑戦です。
もうひとつは「倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER」によるアマチュアレーサーを支援、チャレンジプログラム「S耐への道」です。
<MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptの24時間レース初挑戦>
MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept
スーパー耐久シリーズには9つの参加クラスがあり、それぞれに改造範囲などが定められています。
ST-Qクラスは、主に自動車メーカーによる開発車両専用クラスとも言われ、カーボンニュートラル技術の開発主体で5社が参戦しています。
「共挑」(共に挑む)というスローガンで業界の垣根を越え、カーボンニュートラル社会に向けて、各社共同でメッセージを発信しながら技術開発を行っています。ここでは各社が水素燃料やカーボンニュートラル燃料を使用。今回、トヨタからは気体から進化した液化水素燃料車が、またトヨタ、スバルに加えて、あらたにホンダや日産からもカーボンニュートラル燃料車がST-Qクラスに初参戦しました。
ST-Qクラスに国内メーカー5社(トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバル)が参戦中
マツダがデザインした「共挑」ステッカーを各社のST-Q車両に貼って連携をアピール
マツダは、ユーグレナ社製の100%次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」(HVO)*を使用するディーゼルエンジンを搭載した「MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept」55号車での24時間レース初参戦となりました。
* Hydrotreated Vesetable Oil
バイオディーゼル燃料「サステオ」の給油装置
このHVO燃料は廃食物油が原料。化石燃料と混合せず100%の含有率で使われています。また、軽油代替のバイオディーゼル燃料は、市販されている軽油と分子構造が同じで、エンジンへの負荷が少ない特長があります。
(左)走行後のドライバーから情報収集
(右)ピットでは給油とドライバー交代、タイヤ交換
(左)クラス混走は本レースの魅力のひとつ
(右)1周ごとにラップタイムを確認中
24時間レースでは速さだけでなく、燃費計算やピット作業のチームワークを含む戦略が重要になります。1台につき最大6名のドライバーを交代しながら周回を重ねます。今年のレースではフルコースイエロー*1が計7回、セーフティカー*2が計4回も導入される波乱のレース展開となりました。
*1 Full Course Yellow (FCY):競技長が安全上、必要と判断した場合に宣言され、コース上での走行速度は上限50㎞/hに制限、追い越し禁止となる.
*2 Safety Car:コース上またはコースサイドでのアクシデントにより安全なレースができない場合に出動し、処理が終了するまで隊列を先導する。FCY同様、追い越し禁止。
発生したマシントラブルを修復して再びコースへ
特に55号車のMAZDA3 Bio conceptは日付が変わる前の23時30分頃、走行中に突然コースサイドに停止させるトラブルに見舞われました。原因はハブボルトが折れ、タイヤが外れたというもの。その後、何とかピットまで戻ったマシンをメカニックによる懸命の修復作業で、明け方にはコース復帰を果たします。その後も着実に周回を重ねたMAZDA3 Bio concept 55号車、Roadster 120号車の2台は午後3時、揃ってコントロールラインを通過、24時間レース初完走を果たしました。
(左)午後3時のゴール時間まであと少し
(右)2台揃ってゴール
ST-Qクラス MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept 55号車は 529周。
24時間完走後、ピットロードで笑顔の出迎え
MAZDA SPIRIT RACINGチーム 木田努監督
「昨年(2022年)はチームとして初の24時間レースに挑戦しましたが、残り僅かでリタイヤとなり悔しい結果となりました。今年は絶対に完走することを目標に、やれることはすべてやり切り、自信をもってレースに臨みました。
結果は皆さまご存じの通り24時間を走り切りチェッカーを受けることができ、1年越しの思いが叶いました。応援していただいた皆さま、サポートしてくれたスタッフやチームメンバーには本当に感謝しかありません。お疲れさまでした。そして、ありがとうございました。
一方で、トラブルなどで停車していた時間も多くあり、チームとしてはまだまだ課題も多くあります。今回の反省を生かし、トラブル無しでレースを走り切れるようにして行きますので、今後とも皆さまからの熱い応援を、よろしくお願いいたします!」
「スーパー耐久レースへの道」のチャレンジプログラムメンバーも参戦
倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER
チャレンジプログラム「スーパー耐久への道」は、「ロードスター・パーティレースⅢ」や「富士チャンピオンレース ロードスターカップ」で優秀な成績を収めたドライバーが、スーパー耐久シリーズにチャレンジする企画です。
公式ホームページ:https://www.mazda.com/ja/innovation/motorsports/supertaikyu/challengeprogram
今年のスーパー耐久レースには、MAZDA SPIRIT RACINGとは別チームで参戦。アマチュアレーサーのモータースポーツ参加を支援する「チャレンジプログラム」で結成された6名のドライバーが「倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER」でST-5クラス(1500cc未満)へ参戦しています。
チャレンジプログラムメンバーで初めての24時間レースを完走
「倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER」 120号車は582周でST-5クラス6位入賞。その後スポーツランドSUGOで7月8-9日に開催された第3戦にも出場し、見事連続完走を果たしました。
<各クラスに参戦したマツダ車も完走>
スーパー耐久シリーズの中で最小排気量のST-5クラスには、メーカー別では最も多い7台ものマツダ車(ロードスターとデミオ)が参戦していました。
レース後には車種やチームを問わず完走した全車に拍手が送られました。
ST-5クラス優勝のDIXELアラゴスタNOPROデミオ
ST-4クラスで2位となったodula TONE MOTUL ROADSTER RF
ST-5クラス3位となったodula TONE 制動屋ロードスター(後方)
トヨタ、スバル、マツダ3社ラウンドテーブルで誓う「共挑」(きょうちょう)の未来
レース中には記者会見や取材が複数行われましたが、トヨタの佐藤恒治社長(写真左)、スバル大崎篤社長(当時専務:写真中央)、マツダの毛籠社長(当時専務:写真右)の3名が同席しての会見も行われました。
各社がレースの場で将来技術の開発をオープンに行っていくこと、クルマの将来技術、モータースポーツの場でのエンジニアの育成、一般ユーザーのモータースポーツへの参加支援など、今後のモータースポーツに関わる様々な取り組みについて、和気あいあいとした雰囲気の中で語られました。
24時間レースの楽しみ方はいろいろ、カーボンニュートラル関連の展示も充実
来場数47,000名との発表。昼夜排気音が響き渡るサーキット場内には多くのテントが建ち、家族や仲間で楽しむ姿を見かけました。
(左)テントでの観戦も人気
(右)夜もレースは続きます
また、今回のスーパー耐久レースでは、カーボンニュートラル関連の技術を搭載するレース車両が走っているだけでなく、環境展示がありました。グランドスタンドに隣接するイベント広場には水素燃料供給装置や水素給電装置、バイオ燃料などが展示され、実演や説明が行われており、レース中にも足を止めて話を聞く来場者が数多くいらっしゃいました。
水素関連企業の展示:船で輸送される液体水素タンクも登場
マツダが使用するバイオ燃料の展示
MAZDA MX-30 R-EV(欧州仕様)の展示も好評でした
モータースポーツは自ら参加するアスリート競技としての走る歓びの場。
同時に、多様な新技術がモータースポーツで試され、磨かれて市販車に搭載されてきたことはよく知られています。
今、カーボンニュートラル技術を搭載した各社のクルマたちが、テストコースではなく公の場所で走りだし、競い合っています。ぜひ注目していただき、応援をよろしくお願いします。
マツダは人々の日常に移動体験の感動を量産し、生きる歓びをお届けしていくことを目指します。
この一環としてMAZDA SPIRIT RACINGを通じて、将来にわたってサスティナブルなモータースポーツのあるべき姿を追求し、モータースポーツのすそ野の拡大に貢献する活動を行っていきます。
マツダ公式モータースポーツサイト:
https://www.mazda.com/ja/innovation/motorsports/
MAZDA SPIRIT RACING 公式Twitter
MAZDA SPIRIT RACING (@MAZDA_SPIRIT_R) / Twitter