MAZDA BLOG
2017.5.17

今後のさらなる活用を目指す「耐食性迅速評価法」とは!?研究メンバーの想いをご紹介します。

ズラリと並ぶ薬品の数々・・・
理科室のようなここは、一体どこでしょうか???

ここは、マツダ本社にある「防錆実験室」。

難しい名前がついていますが、文字通り「サビ(錆)」に関する実験室です!

このたび、この実験室で開発された「耐食性迅速評価法」が、腐食防食学会の技術賞を受賞したと聞いてやってきました。

 

この「耐食性迅速評価法」というのは、
「数ヶ月間かかっていた試験期間を数分間に短縮」できる、画期的な評価法だとか。

 

さらに耐食性の高い塗装を目指して今後運用するというこの評価法とは、一体どのような技術なのでしょうか。担当者に詳しく聞いてみましょう。

この技術に取り組み6年の浅田 照朗(あさだ てるあき)が、分かりやすくご紹介します!


(写真:左から技術研究所の佐々木 將展(ささき かつのぶ)、浅田 照朗、重永 勉(しげなが つとむ))

 

みなさん、こんにちは! マツダの技術研究所で防錆技術の研究をしている浅田です。

本日は、日常生活でも見かける機会が多い「サビ」について、マツダの取り組みをご紹介します。

 

■サビの正体とは???

みなさんは、そもそも「サビ」とはどのようなものかご存知ですか?

 

サビは、鉄が水・酸素と反応してできたものです。そして、発生したサビは塩分(海塩や融雪塩など)により促進されるという性質を持っています。

そのため、屋外で使うクルマにとってサビは大敵。私たちは、サビの発生を極力抑え、みなさんにキレイに乗っていただけるクルマづくりのために、日々研究しています。

ボディ(鋼板)と水/酸素が接触しないようにすることがとても大切でなのですが、その要となるのは「塗装」

 

一般的に、クルマの塗装には、大きく分けてサビを抑制するための「防錆塗装」と、ボディカラーを出すための「彩色塗装」があり、この防錆塗装の品質が錆びにくさを左右します。


(イラスト:塗装面イメージ)

 

■「加速試験器」を使っても、試験期間は3ヶ月もかかります

さて、クルマのサビはどのように試験していると思いますか!?

実は、部品ごとに実際にサビさせているんです。

 

サビの発生を待たないと評価できないため、加速試験器を使った試験でも期間は3ヶ月程度ととても長く、あらゆる環境を想定した最悪条件で試験を行っています。

これが、その試験器。ちょうど軽自動車くらいの大きさですね。もちろん試験器そのものは普段持ち運ぶことはできません。


(写真:実耐食性試験器(加速試験器))

 

この中で部品に塩水を吹きかけるなどしていますが、試験器に入る部品の大きさが限られているため、このように必要な部分を切り取って試験器に入れます。

今行っているのは、ボディに泥が付着した場合に、どのようにサビが発生するかを見る試験です。このプレートを3ヶ月程度かけてチェックします。

 

3ヶ月と聞いて、「長い!」と思いますよね?それは私たちも同じ思いでした。

時間を短くし、だれでもどこでもできる試験方法が無いかと模索し、広島大学と共同研究で完成させたのが「耐食性迅速評価法」です!

 

■実演!数分でできる新測定方法!!

では、実際に新しい評価法で試験をしてみましょう!

これが試験器(写真左)。3キログラム程度なので、カバンに入れて持ち運びできます。試験の準備は測定したい部品に、電極(赤と黒のコード)と塩水をセットするだけです。

あとは電源を入れて、どの程度の電力まで耐えられるか(どの程度腐食に強いか)を確認します。

(試験中・・・約数十秒)

 

はい、試験終了です。

マイナスの電極(黒いコードの先)を当てた部分の塗装の強さを確認できました。

 

この試験のポイントを簡単に言うと、

「自然にサビるのを数ヶ月待っていた」

ものを、

「電気の力を使って、その場でサビやすさを確認」

したことです。つまり、電気の力を借りて、さびやすさを予測できるようになったのです。

 

そのメカニズムをちょっと詳しくご紹介しますね。

サビを防ぐ塗装膜には網目状の隙間があって、時間が経つと、じわじわ「水と酸素」が透過して鋼板に達しサビが発生します。

 

しかし、サビるのを待っていると加速試験器でも数ヶ月かかってしまう・・・そこで、防錆塗膜に電圧を加えて「水と酸素」を強制的に塗装膜に浸透させ、その浸透のしやすさで「サビやすさ」を計測しているのです。

 


(イラスト:耐食性迅速評価法のイメージ)

 

時間が圧倒的に短縮できたことにより、今まで以上に様々な条件で試験を繰り返すことが可能になりました。今後この試験方法を活用して、永く良い状態で乗っていただけるクルマづくりを目指していきたいです。

 

普段聞くことがないクルマ開発の裏側の話で難しかったかもしれませんが、みなさん、最後までお付き合いありがとうございました。

 

みなさん、いかがでしたか!?

塗装というと、「ソウルレッド」や「マシーングレー」といったボディカラーをイメージしがちですが、そのボディカラーを保つための塗装技術にもマツダは力を注いでいます。

洗車をするときなど、防錆塗装のことを少しでも思い出していただけると大変嬉しいです。

 

なお、この試験方法は、5月24日(水)~26日(金)にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催される「人とくるまのテクノロジー展2017 横浜」のマツダブースでもご紹介しています。ぜひ会場にお越しください。

 

マツダでは、今後この試験方法を運用し、さらに耐食性の高い塗装を目指していきます。

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