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2013.11.7

【魂動デザインをイメージしたイスに込められたモノづくり #3】〜磨きの職人が追い求めた脚の質感〜

今年4月、イタリア・ミラノで開催されたデザインイベント「ミラノサローネ」で展示された、魂動デザインをイメージしたイス。
魂動デザインをテーマにしたこのイスは、磨き抜かれた流麗なフォルムと引き込まれるような高い質感、光と影のグラデーションの美しさから、生き物の持つダイナミックで躍動感のある造形と、巧みに計算され研ぎ澄まされたモノに宿る「魂」が感じ取れる作品に仕上がっています。
このイスの製作にかけた想いやこだわりを連載でご紹介する「魂動デザインをイメージしたイスに込められたモノづくり」。
前回のクレイモデルの製作を担当した相川さんに引き続き、今回は、イスの脚を磨きあげたハードモデラーの川野さんに、製作にかけた想いやこだわりをお聞きしました。
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川野さんの普段の業務はハードモデルの製作。
クレイモデルがクルマのデザイン形状を確定させるため粘土で作る模型であるのに対し、
ハードモデルは、決定したクルマのデザインをもとに、より実車に近い見え方を確認するため、樹脂や鋼板などで作る模型のこと。
川野さんはこのハードモデルの製作はもちろんのこと、元々は板金職人として入社した経緯から、金属の磨き処理にも高い技能を持っています。その匠の技が評価され、今回制作するイスの脚の研磨担当に抜擢されました。
川野さんをはじめベテランが揃いスタートした今回のプロジェクト。しかし完成までには予想外の出来事も起こったとか。
イスの脚もその一つ。クレイモデルによって最終デザイン形状が決定した脚はその後、アルミの塊から機械を使って最終デザインと同じ脚を削り出します。
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これがその脚です。素人目には美しい曲線に見えます。
しかし、「魂動デザインをイメージしたイス」をデザインしたデザイナーにとって、この脚はとても満足いく仕上がりではありませんでした。
なぜなら実際に削り出された脚にはほんのわずかな凹凸があり、表面の輝きもイメージしていた「アルミの質感」とは異なる「メッキの質感」だったため。
脚にほんのわずかな凹凸が生じたことで、真っ直ぐになるべき光のラインがわずかに蛇行してしまい、求める脚とは異なるものになっていたのです。
ここから、凹凸を直し質感を高めるため、川野さんの作業が始まりました。
「部分的に削ったり磨いたりするだけではだめなのです。左右の脚を比較して同じに見えるよう、様々な角度で確認しながら磨きを加えていきました。」
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何度も試行錯誤を繰り返した末に完成したイスの脚。
「光のライン」だけでなく、(写真からはわかりにくいのですが)「アルミの質感」も見事に表現されています。
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一番見てほしいところを川野さんに伺うと、自信をもった表情で答えてくれました。
「やはり光の加減ですね。魂動デザインをイメージしたイスでは、メッキのようなキラキラした光り方ではなく、つや消しにしたアルミの質感を追い求めました。光を当てたときにシャープに見えたり、力強く見えたり、そんな表情の違いも感じ取っていただけたら嬉しいですね。」
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妥協せず最後まで磨き終えたときの川野さん、温かく優しいまなざしが印象的です。
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イスだけでなく、皆さんが普段目にするマツダのクルマのデザインにも、川野さんのような職人の技術やこだわりが活かされています。ぜひ皆さんがマツダのクルマを見かけたときはこうした技術やこだわりを感じとってみてください。
次回は魂動デザインをイメージしたイスの座面を創り上げた職人とそのこだわりをご紹介します。
続きは、こちらをご覧ください。
【魂動デザインをイメージしたイスに込められたモノづくり #4】~二人の師弟ハードモデラーの挑戦
https://blog.mazda.com/archive/20140507_01.html
◇以下の動画からもマツダの「魂動」デザインを感じていただけます。
【魂動デザインをイメージしたイスに込められたモノづくり #1】

【魂動デザインをイメージしたイスに込められたモノづくり #2】〜クレイモデラーが込める温もりと魂
https://blog.mazda.com/archive/20130822_01.html

【魂動デザインをイメージしたイスに込められたモノづくり #4】~二人の師弟ハードモデラーの挑戦
https://blog.mazda.com/archive/20140507_01.html

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