MAZDA公式ブログ
2019.3.15

瞳と光で見極める!~マツダの塗装品質保証~

みなさんがクルマを見る時、その第一印象はどこから来ていますか?おそらく「色」か「形」ではないでしょうか?

今回のブログでご紹介するのは、「色」のお話。ですが、「新しい色の開発」ではなく、色を塗ったボディー塗装面の「品質保証」についてです。

瞳と光で見極める!~マツダの塗装品質保証~

マツダのボディーカラーは、「色も造形の一部」として開発された「魂動」デザインを象徴する高意匠色の「ソウルレッドクリスタルメタリック」や「マシーングレープレミアムメタリック」を入れて現在全14色(掲載時点)あります。美しいクルマを、お客さまにお届けする。そのためには、色の開発や色を塗る工程に加えて、塗装面の品質保証も大切な要素の一つ。

 

「マツダのクルマに、まずは視覚で感動していただきたい!」

その想いでクルマの塗装面を検査し、品質保証に取り組む職場の姿をご紹介いたします。

 

 

塗装の品質保証とは?

 

さて早速、塗装検査の工程にやってきました。

まず目に入ってきたものは、たくさん配置された細長い照明と、黒い壁と天井。まるで遊園地のSFアトラクションのような検査ラインに、光を反射してゼブラ柄に見えるクルマが流れていきます。

その中で、クルマをのぞき込んでいるのが、こちらの職場の皆さん。いったい、何をしているのでしょうか?

瞳と光で見極める!~マツダの塗装品質保証~
塗装検査工程

 

今回、職場を案内してくれた、マツダ本社工場 第1車両製造部の成田 哲也(なりた てつや)が答えてくれました。

「塗装工場から塗料の乾燥を終えたばかりのボディーが、こちらにやってきます。この後の組立工場に引き継ぐ前に、ここで塗装の状態をしっかり確認するというのが、私たち検査工程の仕事。光を当てて、人の眼で一台ずつ丹念にクルマ全体をチェックしています。検査項目は塗装面の異物や凹凸の有無、色彩、艶など、全部で51項目。検査する部位こそ皆で分け合っていますが、1人1人が51項目を全て覚え、お客様のために自信をもってお届けできる品質になっているかを判断しています」。

 

この職場で担当しているクルマは、ロードスターやCX-3、CX-5、CX-8、CX-9など全部で7車種あり、マツダのボディーカラー全14色がそろっています。全項目をもれなく検査するために、動体視力とカラー・色感の基礎訓練を繰り返し行っています。また、検査方法として目線の角度や距離などをきめ細かく標準作業として落とし込み、その内容を覚えてから検査を行っています。

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左:カラートレーニングの様子、右:車種毎に検査方法と検査項目が示されている標準作業票

 

検査項目とはどのような内容なのでしょうか?

成田が見せてくれたのは、さまざまな色に塗装された鉄板。これらは、この職場に配属された新人育成や、新色を導入する際に訓練するための、テストピースです。

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訓練用のテストピース

 

突然、「これ見えますか?」と、成田がその中の一枚を取り出しました。

「塗装面の異物や凹凸を『ブツ』と呼んでいます。その『ブツ』がこの中にあるので、見つけてみて下さい」と渡されました。

早速、見てみましょう。


【動画】光で映し出されるブツ

 

わかりましたか?

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左:何もしないと見えない「ブツ」も、右:光を当てることで映し出されます(黄色丸箇所)

 

「このような、1ミリ程度の凹凸も見逃せません。車1台あたり20㎡の塗装面を、このラインの約9分間でくまなく丹念に検査しているのです」。

ちなみに年換算にすると、昨年は(宇品第1工場での生産台数)約264,000台×20㎡=約5,280,000㎡に相当。なんとマツダスタジアム約104個分にあたる塗装面の検査を、この職場で行った計算になります。

 

「現在、魂動デザインが、お客さまに高い評価を頂いています。この魂動デザインによる、ボディーの面や曲線などの造形と、深い陰影を持つ高意匠色による塗装は、検査する私たちにとって難しい課題となりました。その塗装の品質を正確に判定するために、職場の条件を整え、技能の育成と維持に努めています。そのこだわりのポイントを2つ、ご紹介させてください!」

 

 

塗装検査ライン「こだわりポイント」

 

その1:検査条件「LEDと黒い壁」

壁一面に並べられた照明。一見、蛍光灯に見えますが、実はLEDを採用しています。

約3年前まで、ここは普通の蛍光灯が並んでいました。蛍光灯には、端に安定器があるのをご存知でしょうか。安定器の部分は光らないため、検査の際ボディーに光源が当たらない箇所が出来てしまいます。

先ほどもご覧頂いたように、わずか1ミリ程度の小さな異物や凹凸でも見つけることが私たちの仕事です。ボディーの面や曲線に関わらず、あらゆる箇所に確実に光を当て、検査する必要があります。そこで、照明を全てLEDに付け替えることで、光が切れ目なくボディーに映り検査が行いやすくなりました。


改善前 蛍光灯

 

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改善後 LED

 

さらに、壁や天井の色が黒いのも工夫のひとつ。光を際立たせることで、検査をしやすくしています。

また、掲示物や物が置いてあるとボディーに映り込んでしまいます。映り込んだものを見てしまうのが人のクセ。ボディーに違う色が映り込まないように、品質チェックを行う工程の壁・床・天井など、必要な物以外の黒色化を徹底して進めました。

こうしてできあがったのが、一見、遊園地のSFアトラクションに出てきそうにも見える、私たちの職場の風景なのです。

 

 

その2:技能育成と維持「タブレット端末とアイトラッキング」

では、工程の条件さえ整えば誰でも検査ができるのか?というと、そうではありません。

検査の作業風景を、動画でご覧ください。


【動画】検査風景

 

一見、簡単そうに見えるかもしれませんが、塗装面を検査する上では、光源を入れ込む角度と検出する距離がとても重要です。単純にのぞき込んでいるだけではないのです。

私たちは、1車種当たり約180箇所について、検査に適切な角度と距離について検証しました。分度器と測定紐を組み合わせた手製の器具を使って見いだした検査方法を、全員の作業手順として定めています。

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手製の器具を使って角度と距離を検証中

 

こうして1台1台を、誰もが同じ動きで検査することができる基準を作りました。

それでも、配属時や新色導入時の作業訓練、そして口頭や書類による日頃の指導や確認だけでは、現状維持からはなかなか抜け出せない…。

さらには、ソウルレッドクリスタルメタリックやマシーングレーメタリックなど高意匠色にも、しっかりと対応していかなくてはならない…。

さらなる課題に挑みます。

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分度器を使い目線の角度を指導する成田

 

高い塗装品質の確認には、検査員が身に付けたスキルを維持し、更に向上させることが必要です。

そこで、塗装検査のプロフェッショナルとしての「厳しい目」を養うべく、検査員の「動作」と「目線」に着目。それぞれを評価するための新しい機器を導入しました。

 

一つ目は、タブレット端末=動作評価です。

タブレット端末の導入により、作業の現場で検査員の動きを確認できるようになりました。同じ位置で撮影したお手本となるマスター動画と、検査員の動作を定期的に比較。手順書を振り返る手間もなく、手軽に目線角度と距離に対する適正な動きを確認し、各々が維持できる体制を整えています。

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タブレット端末で作業動作を確認

 

二つ目が、アイトラッキング=目線評価です。

アイトラッキング技術は、角膜の光の反射から実際に人がどこを中心に見ているのかを、可視化する技術。これまで他人には分からなかった、人の目線を確認することができます。塗装検査では、この目線が重要。人間の目線には中心視と周辺視が存在し、周辺視の場合は見えている様で見えていない場合があり、塗装面をきちんと中心視で検査する必要があるのです。

職場では、このアイトラッキング技術に着目し、機材を導入。定期的に検査員に着用してもらい、目線の位置や反射光の導線が手順通りに行われた「厳しい目」による、作業の実施をしっかりと検証・確認しています。

アイトラッキングの動画を作業風景と合わせてみましたので、ご覧ください。

【動画】アイトラッキングと検査風景

 

塗装面の品質保証は、一人ひとりの能力ももちろん大事です。加えて、科学的な人間の分析と技術を融合させることにより、だれもが最良の検査スキルを習得し、維持することができるようになりました。さらにデータを蓄積し検証していくことで、さらなる検査能力の進化を見据えて日々の業務に取り組んでいます。

 

 

お客さまの感動と笑顔を想い描いて

 

一見、簡単そうに見えて、実は奥が深い塗装の検査。その業務に対する想いを、成田が語ります。

「私たちの使命は、お客さまに視覚で感動していただくこと。お客さまの目に最初に映り込む、美しい色、美しいデザイン、美しいボディー面・・・その感動を保証し、自信を持って商品をお届けするべく、1台1台を丁寧に検査員としての誇りをもって確認しています。マツダのデザインとカラーは進化し続けています。同時に、私たち塗装の検査員もスキルを高め、進化していかなければなりません。どんなデザイン・カラーでも確実に品質保証できる。その仕組みを整え、技を磨いて検査の匠となる。私たちはお客さまの笑顔のため、これからも挑戦し続けていきます」。

瞳と光で見極める!~マツダの塗装品質保証~
マツダの塗装面は私たちが保証しています!

 

 

現在の塗装検査の職場。そこには、1人1人が日々の業務に励むだけではなく、科学的見地と最新の技術を組み合わせて技を磨く姿がありました。

お客さまに感動していただける商品をお届けするための、絶え間ない努力。マツダのクルマが目にとまった時、彼らの姿と想いも、思い出していただけると幸いです。

 

 

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