MAZDA公式ブログ
2019.8.8

動くオーディオルームをつくる:MAZDA3「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」

5月下旬に国内販売を開始した、マツダの新世代商品第一弾「MAZDA3」。

「日常が鮮やかに輝くパーソナルカー」をコンセプトに、基本要素を一新。クルマならではの提供価値に、磨きをかけています。

 

動くオーディオルームをつくる:MAZDA3「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」今回ご紹介するのは、MAZDA3から採用されている「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS(マツダ ハーモニック アコースティックス)」。

音響の基本に立ち返り、音の大きさ、方向、そして時間変化という3つの側面から、人間の特性に合わせて新開発した、純正カーオーディオシステムです。

なんと、スピーカーの基本レイアウトを変更するのは30年ぶりとのこと。

その開発の背景と想いを、担当エンジニア3名に聞いてみました。

 

理想のカーオーディオを追求

動くオーディオルームをつくる:MAZDA3「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」手島「これまでも『カーオーディオを造り込もう』という想いで、各商品での開発に取り組んできました。

ただ、スピーカーを置く位置や向きはある意味『常識』のように考えられていて、変更されてこなかったのも事実。

今回のようにゼロから造り込み、30年来の常識を覆した例はないですね」

と語る、この道30年のベテラン、統合制御システム開発本部 電子性能開発部の手島 由裕(てしま よしひろ)。  

 

過去にはインパネ下部に斜め下向きで付いていた小さなスピーカーが、ドアの下部に移ったのは、マツダでは1989年(平成元年)からでした。

「これも大きな進歩でした。スピーカーは大きくなり、断然いい音になった。当時は『少しでも低音を出したい』という考えがベースだったと思います」。

その後もスピーカーを増やしたり、エフェクト機能を追加したりもありました。数年前には、オプション設定オーディオのサプライヤーであるBOSE(ボーズ)社さんから、ドア下部の低音域スピーカーを移設する提案をいただき、検討も続けていました。

しかし、これまで実現に結びつけることができず、ドア下部にスピーカーを置くという「常識」は変わらなかったそうです。

 

それを変えるきっかけは、何だったのでしょうか。

「MAZDA3の開発では新世代商品の第一弾として、まずオーディオの『理想』を描くことになりました。それが大きな転換点です。

再生音量は時と場合によりけり、お客さまの音楽の好みも人それぞれです。となると、音量の大小にかかわらず広い周波数帯をしっかり聴かせられるポテンシャルと、音源に入っている情報を正しく再生できる『原音再生』が必要ではないか。

それを、『理想のカーオーディオ』として実現しようという考えに至ったのです。

音響の基本に立ち返り、ゼロベースでクルマの音響性能の最適化を探る、絶好の機会にもなりました。

こうして、マツダ独自のスピーカーレイアウトコンセプトによる、MAZDA HARMONIC ACOUSTICSが生まれたのです」。

 

動くオーディオルームをつくる:MAZDA3「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」レイアウト
ウーファー:低音域スピーカー
スコーカー:中音域スピーカー
ツイーター:高音域スピーカー

 

音域とレイアウトの深い関係

動くオーディオルームをつくる:MAZDA3「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」若松「『原音再生』は当たり前。クルマでも音楽はきちんと聴こえている、と思われるかも知れません。

でも実際は異なります。この課題を、低音域と中高音域に分けて解決しました」

と、開発の中心メンバーの一人、統合制御システム開発本部 電子性能開発部の若松 功二(わかまつ こうじ)が説明してくれました。

 

 低音域は音量との関係、いわゆる「ダイナミックレンジ」が課題でした。

「1つの曲の中で低い音だけでも、大きな音から小さな音まで含まれています。音量を小さくした時に低音だけが埋もれてしまったり、逆に音量を上げても低音だけは物足りないと感じたりしたことは、ありませんか?」

動くオーディオルームをつくる:MAZDA3「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」ダイナミックレンジ
ダイナミックレンジ改善

 

「小音量で低音が埋もれてしまう原因はロードノイズなどによるもので、これは静粛性を担当する車両開発本部のNVH性能開発部が解決してくれました。

一方、大音量でも物足りないと感じる原因については、車室内の音響特性を解析しました。

すると、フロントドアは『低音域が鳴りにくい場所』であることが判明。これまでの『常識』が覆された瞬間でした。

それならばよく鳴る場所にと、低音域のスピーカーをより前方の、カウルサイドに移動させることにしました」。

動くオーディオルームをつくる:MAZDA3「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」低音スピーカー移設
低音域スピーカーの移設

 

中高音域では、音源の情報を正しく再生できるよう、スピーカー位置をインパネの上からフロントドア上部に変更しています。

「これまではフロントガラスに音を当てて、反射音を主に聴かせていました。ただし、すべての音が均一に反射されるわけではありません。

また、この反射音は、ホールなどのゆったりとした弱い反響・残響と異なり、ごく僅かに遅れる強い音。これを人間は『一つの音』のように捕らえるのですが、厳密には濁って聴こえている状態です。

そして人間は、中高音域の聴こえてくる方向を感じやすい特性があります。現在は多くがステレオ音源ですが、反射音では左右のバランスも曖昧になってしまいます」。

動くオーディオルームをつくる:MAZDA3「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」中高域スピーカー
中高音域スピーカーの移設

 

「Mazda Harmonic Acousticsではスピーカーレイアウトの変更により、直接音を主に聴いていただけるようになりました。

音響の基本からゼロベースで追求したからこそ、結実できたと考えています」。

 

いい音を聴けば心が動く

動くオーディオルームをつくる:MAZDA3「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」手島と若松それでは、どのようにスピーカーレイアウトを固めていったのでしょうか。

「レイアウトを決めるまでに、何度も何度も検証を重ねました。

『試聴車』という、スピーカー配置を変えられるクルマを準備し、配置パターンを可能な限り、ひとつひとつ調べていきました。

自部門、さらには関係部門のメンバーにも『乗って、聴いて、意見をもらう』を繰り返した結果が凝縮されています」

と、手島と若松は振り返ります。

 

開発の途中、若松には2つの印象的な出来事があったと言います。

「設計や生産の担当スタッフを試聴車に乗せ、レイアウト変更前後を実際に比較してもらいました。

すると、『変更後のほうが絶対にいいじゃないか!ぜひやろう!!』と、皆さんの感想。

レイアウト変更となると、組み立て方や組み付け方も変える必要があり、設計や生産にもかなりのインパクトがあります。

良い音で心を動かすことで、みんなで同じ理想に向くことができたと感じた瞬間でした」。

 

「また、この時期にあった『出会い』も大きな影響がありました。

社内の設備更新として、新しいホームオーディオ機材の選定も担当していたのですが、飛び抜けて印象に残ったシステムがありました。

音源に収められている情報を素直に余すことなく表現する、まさに『原音再生』。あれは衝撃でした。さっそく、自部門のスタッフにも試聴に行ってもらうと『これだ!』と。

試聴車で検証を繰り返す際も、『あの原音再生を、どうしたらクルマで再現できるか?』と、皆で取り組みました。心動かされる理想の音と、実際に出会えたことは大きかったですね」と、笑顔で振り返ります。

ちなみに、そのシステムは無事に社内へ導入され、活躍しています。

 

理想に向けて、ともに創る

動くオーディオルームをつくる:MAZDA3「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」六浦「理想のレイアウトは定まりました。ですが、今まで無かったところにスピーカーを配置する。

置き方や形状を決めていく作業も、今までに無いことの繰り返しでした」

と語るのは、統合制御システム開発本部 情報制御モデル開発部の六浦 潔(むつら きよし)。

 

 一番の大仕事は、フロントドア下部の低音域スピーカーの、前方の車体側カウルサイドへの配置でした。

「このスピーカー、取り外して見ると不思議な形をしていますが、実は深い理由があります。

スピーカーの多くは、『箱』型の形状になっています。この箱が無いとスピーカーが前後両面で音が鳴って、打ち消し効果で音が弱まることが理由です。

また、箱の大きさにも意味があります。低音は低周波なので、スピーカーを大きく震わせます。小さい箱だと中の空気容量が少なく、大きな振動ができずに良い音が出ないのです。

この容積のあるスピーカーを、インパネ内の膝上あたりに設置するには、どうすれば良いか試行錯誤しました。

まず、ペダル操作時に当たらないよう、形状を少し凹ませています。そして別方向へ箱を大きくしようと、全体の設計部門とも相談しながら進めました。

すると、配線用のボディー穴を利用するアイデアが生まれ、この穴も使って容積を確保。合わせて穴をふさぐ形状にすることで、静粛性の向上にも役立てています」。

動くオーディオルームをつくる:MAZDA3「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」低域スピーカー
低音域スピーカー
動くオーディオルームをつくる:MAZDA3「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」六浦と低域スピーカー
配線用の穴を利用した箇所を示す六浦

 

「スピーカーの口径としては、ドアにレイアウトしていた頃と比べて小さくなっていますが、箱の容積に対する最適サイズを実験して導き出した答えです。

レイアウト変更による効果とも相まって、以前とは段違いに良く聴こえています」。

 

また、滅多に無いスピーカーレイアウトの変更ということで、ちょっとしたエピソードも。

以前の公式ブログでも紹介されていましたが、この低音域スピーカーの移設は静粛性の観点からNVH性能開発部から早くに提案され、我々も音響性能向上の観点から共創して実施しました。ところが、社内の一部には『ドアからスピーカーが完全に無くなる』と伝わっていたようなのです。

新レイアウトの見当をつけた段階で、中音域スピーカーをドアパネルの上部に置こうと、とある部門へ調整に行きました。するとビックリされて『ドアにスピーカーは無いと聞いていたから、置くことを考えずに進めていたよ!』と。我々もビックリ。

もちろん、しっかりすり合わせた上で、スピーカー込みでうまく仕上げてもらいました」。

 

動くオーディオルーム

理想のカーオーディオを実現するべく、スピーカーレイアウトの「常識」にまで踏み込んで造り込んだ、MAZDA HARMONIC ACOUSTICS。

その試乗(試聴)時の、ポイントも聞いてみました。

「明らかに低音はタイトに、中高音はすっきりクリアに聴こえるようになりました。音楽のジャンルを問わずすんなりと感じていただけますので、ぜひ、いつもクルマで聴いている音源で比較していただきたいと思います。

また、お一人の時は『運転席モード』も、ぜひ試してください。助手席側からの音がドライバーの耳に届くまでの、時間差と音量差を整える機能。本当に微妙な差ですが、『全席モード』と比較すると、その良さと違いが分かりますよ」。

 

また、「クルマだからこそ」できることもある、と。

「クルマの静粛性は、ドアを閉めると外からは音楽が聴こえないレベルまで高まっていますが、家で同条件を整えるのは大変。それに比べればお手軽に、良い音を楽しめる環境が整っています。

ヘッドホンをしながら公共交通機関で移動するよりも、自分の運転で音楽を聴きながら出かけようと思っていただいたり、曲やアルバムのキリが良いところまで寄り道したり、駐車場で音楽を聴いていただいたり。

この『MAZDA HARMONIC ACOUSTICS』が『動くオーディオルーム』として、お客さまの日常を輝かせる、ちょっとした彩りとなれば嬉しいですね」。

動くオーディオルームをつくる:MAZDA3「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」

ちなみに、マツダで初めてドア下部にスピーカーを設置したクルマは、1989年(平成元年)発売の「ファミリア アスティナ」だったそうです。

元号は平成から令和へ、クルマはファミリアからアクセラそしてMAZDA3へ、さらにカーオーディオも「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」へ。

 

新時代を、お気に入りの素敵な音楽とともに、素敵なカーライフをお楽しみください。

 

 

■動画「ALL-NEW MAZDA3 – “Sound that transports you”(日本語版)」(YouTube)

■マツダオフィシャルウェブサイト:MAZDA3 音響空間
https://www.mazda.co.jp/cars/mazda3/sound/

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