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2012.5.18

【CX-5のデザインができるまで #5】デジタルモデラー三岳さん

この記事は、過去Facebookに掲載した記事です。

「CX-5のデザインができるまで」

第5回目はデジタルモデラーの三岳さんに、「プロセス4:デジタルデータを造る」について話を聞きました。

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デジタルモデラーは、デザイン開発の初期から完成まで関わる

デジタルモデラーはコンピュータを使い、デジタルの世界でモデル(データ)を造るのが仕事です。
そのデータは大きく分けて2種類あります。
1つは「何度も何度も試行錯誤しながら造り直していく」デザイン検討用のデータ。もう1つは「決定した最終デザインを量産用設計図にする」最終的に商品となるデータです。
1 つ目の検討用デジタルデータですが、このデータは主にスケッチを基に造られます。スケッチからいきなり実際のモデルを造るのは大変なので、先ずはデータで デザイン検討を行い、それを基にしてクレイモデルを造ります。時には大枠のレイアウトだけで、スケッチもないような手探りの状態から始めることもあります。

開発が進むと、「デジタルをクレイに」「クレイをデジタルに」というやり取りをして、デザインを造り上げていきます。「クレイモデル」 と「デジタルデータ」それぞれに強みがあるのですが、デジタルの強みは「クルマの色味・素材感やパーツの造り込み」まで、作成しながら細かく確認できると ころですね。

もう一つの「最終的に商品となるデジタルデータ」は、設計部門がこのデータを基に量産用の型を造ります。ボディもインテリア も、クレイモデルやモックアップで外観デザインやボリューム感、クルマに乗った際の各パーツの距離感等を決定し、最終的に全てデジタルデータで形状表現していくという作業になります。パーツによっては、デジタルの世界だけで完結させてしまうモノも多々あります。それらが量産の際の設計図となるのです。

つまりデジタルモデラーの仕事は「スケッチが起こされた開発初期からスタートし、最終製品の直前まで付き合う」ことになるため、長期間クルマ造りに関わる職種と言えます。

CX-5を支えるデジタルモデラーの職人技

CX- 5では全く新しいコトにチャレンジしています。例えばボディサイド面の流れ一つとっても、クレイモデラーが魂動を表現するために、ものすごい職人技を使っ て、ある意味「感性」だけで造っているところがあるんです。デジタルモデラーから見ると理論的に流れを整えたくなる。そういった面のねじれやうねりの「意 図的なところ」「そうでないところ」を判断しながら、より研ぎ澄ました表現にするのが難しかったですね。

ボディはクレイモデルを測定して データを造りますが、クレイモデルと測定したデータではどうしても誤差が発生します。測定器の測定誤差や部品と部品の組み付け誤差もある。だからクレイモ デルの測定通りに造っても実は同じには見えないんです。ミリよりも小さな単位でズレがある。10分の1ミリとか、100分の1ミリとかすごく小さな中で、 デザイナーとクレイモデラーが目指す表現を、「最終的に商品として実現」するために、デジタルモデラーならではの職人技で苦労しながらデータを造っていま す。

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CX-5で初めて取り組んだコトの一つに「シグネチャーウイング」があるのですが、これにはずいぶん泣かされました(笑)。今まではボディに対してバン パーがついて、その間にヘッドランプやフロントグリルがあってと、それぞれのパーツが独立して存在しているものがほとんど。しかしCX?5では独立してい るパーツがある箇所で混然一体としている。よく見ると、ヘッドランプの中にもシグネチャーウイングが続いていくんですが、このデザインは「立体表現するだ けでも困難」だったうえに性能面での制約も多く、データへの落とし込みは本当に苦労しました。是非注目して見てもらいたいポイントです。
デザイナーやクレイモデラーが造りたかったものを、我々デジタルモデラーがデータで表現しないと量産できないわけですから、大変なプレッシャーがかかりますが、同時にやりがいもありますね。

クレイとデジタルの「調和」が合言葉

CX-5は「調和」が一つの合言葉になっていました。調和という言葉があったからこそ、クレイモデラーと、デジタルモデラーが協調して進んでいけたと思います。
例 えば「デジタルの世界」だけでやっていると、コンピュータ画面の中に見えるものだけに埋没しがちなんですよね。同様に、クレイモデラーは目の前にあるモデ ルだけに没頭しがちで、お互い見えていない箇所が沢山ある。だから、データで造っている部品とクレイで造っている部品を並べたときに、様子が違うという ケースも発生してしまう。また、クレイモデルには人の手が入っているので、イメージよりも柔らかい表現になりがちであったり、デジタルで造り込んでいくと 機械的になりがちになってしまう。そういう怖さもある。

そういった箇所で「調和」を取るために、開発初期段階からクレイモデラーとデジタル モデラーは常にコミュニケーションをとり、クレイモデルを測定してデジタル上で比較を何度も行います。デジタル上で比較するとデザインテイストの違いが ハッキリと分かります。逆に距離感やボリューム感はデジタルだけだと分かりにくいので、クレイモデラーにお願いしてクレイモデルに再現してもらったりしま す。そういった密なコミュニケーションのおかげで「調和」を生むことが出来たと思います。

1万分の3ミリまで調整し、小さなパーツにもこだわった。

今 回のCX-5は、小さなスイッチ一つにもこだわって、かなりデータを造り直しています。見てもらえると分かりますが、ほぼ全てのスイッチのモチーフが同じ ですよね。スイッチ自体の機能は違っていても「デザインテイスト」や「スイッチの操作感」を揃えて、場所によっては押し込む量や方向が違うのに、これを同 じものに見せています。同じに見せることは簡単におもわれがちですが、単純にデータの比率を変えるだけでは残念ながら同じには見えないんですよ。本当に少 しずつ、0.1ミリ、100分の5ミリ、もう少しかな、もう少しかなと測ったら1万分の3ミリぐらいだったというレベルの調整を繰り返して、同じに見せる 表現を突き詰めましたね。

あと実はスイッチパネルに入っているラインは、幅が変化しているんですよ。前に向かって細くなっています。普通そ こまでやるかというぐらい、1本ずつ変化量を調整している。誰も気が付かないかな?とも思います。スイッチを操作するときにチラッと見るぐらいだと思うん ですけど(笑)。
確かに量産される工業製品ではありますが、これは完全にオーダー品みたいなものです。そこはデジタルモデラーとデザイナーの血と汗の結晶みたいなところです。
そう思って見て触れて頂ければ嬉しいですね。

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1本の線からも何かを「感じ取る」ことが、デジタルモデラーにとって大切なこと。

デ ジタルモデラーにとって一番大切なことは、私自身は「感じ取る」ことじゃないかなと思うんですよね。例えば、一本の線を見て何を思うかだと。それをただの 線だと思うか、それがクルマでいえばフロントからリアに向けて流れるキャラクターラインであると思えるかどうか。それを感じ取ることができないと「デジタ ルというヴァーチャルな世界の中で極めた表現ができないのではないか?」と思うんです。
「何を感じて、何を感じ取るか?」というところを一番大切にしているのは、もしかしたらデジタルモデラーなんじゃないかと思っています。

次回は、クレイモデラー浅野さんです。

お楽しみに!