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2012.5.25

【CX-5のデザインができるまで #6】クレイモデラー浅野さん

この記事は、過去Facebookに掲載した記事です。

「CX-5のデザインができるまで」

第6回目はクレイモデラー浅野さんに、「プロセス5:クレイモデルを造る」について話を聞きました。

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1/4サイズのクレイモデルで、コアとなるプロポーションを造る

クレイモデラーの仕事は、デザイナーからあがってきたスケッチをもとに、実物の1/4サイズのクレイモデルの「スケールモデル」を造ることから始まります。 スケールモデルを造っていく上で一番大事なことは、プロポーションを造ること。人間でいう背の高さ、肩の幅といったいろいろな寸法を、デザイナーの描いた スケッチを見ながら、デザイナーが表現したいことはこういう形だろう、とイメージを膨らませながら、1/4サイズのスケールモデルに置き替えて、そのクル マのプロポーションを形づくっていきます。

クルマ全体が横長方向から見たラグビーボールであるとイメージしてみてください。そのボールの先 端と後端の点と点を結んだところが、クルマのプロポーションにとって重要な「重心軸」となります。その重心軸に合わせて、ボディーの形状を造り、屋根を乗 せ、タイヤを付けて基本形を造り、そこから理想とするプロポーションを造り上げていきます。その作業の中で、デザイナーが起こしたスケッチと、スケールモ デルとの間にギャップが生まれてきます。そのギャップをデザイナーと会話しながら共通のイメージ認識を持つことで、ギャップをなくしデザインへと落とし込 んでいくのです。そういった工程を繰り返し納得のいくスケールモデルが出来たら、実寸大のクレイモデルを造る作業へと移っていきます。

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デザイナーとクレイモデラーの二人三脚で作り上げる

ク レイを盛り付けたり、削ったりする中で重要視しているのは、デザイナーが描いたスケッチの陰影や奥行き感をどのように表現するかということ。デザイナーと 一緒に、「これぐらいの奥行き感かね?」「ラインの方向性はこうかね?」といったやりとりを頻繁に行い、お互いの認識の摺合せを行います。

マ ツダの場合、デザイナーとモデラーの作業がパッキリ分かれているんじゃなくて、お互いコミュニケーションを取りながら進めているんです。僕が入社して20 数年経っていますが、そのやり方はずうっと変わらない。僕はこれがマツダのモデリング、デザインのDNAだと思っています。分かれてしまうと、「書いたか ら作って。」「作ったのを見て。」「俺はこんなの想像してなかった。」というように、無責任になってしまいがちだと思うのですよね。お互いプロだから専門 領域は当然あるんだけれど、感覚の重なり合う部分は一緒に作っていく。一緒に作っていく中でもお互いの感性も違うからギャップも生まれる。だから、密にコ ミュニケーションを取っていますね。

クレイモデラーは、デザイナーのスケッチを超えるデザインにチャレンジする

クレイモデラーとして一番大切なことは、デザイナーから出てきたスケッチを見て、「これよりももっといいものにしてやろうや。」「これをさらに超えるよう な、デザインを作ってあげようや。」という強い意志。デザイナーの意図をくみ取り、そして会話しながら、想像していたものよりもいいものを造って行こう と。「今回はこのデザインを超えたね。これを一度、デザイナーに見せてみようや。」って、デザイナーとのやり取りを何度も繰り返して高次元のレベルに持っ ていきます。これはクレイモデラー、そしてデザイナー側の強い意志あってこそだと思っています。

もちろん、クレイモデラー内でのチームワー クも重要。僕一人が作業しているわけじゃないから。僕についてくれている下の人達も同じ気持ちになってくれないと、やはり高い次元のデザインはできないで す。マツダのクレイモデラーの強みは、3次元デザイナーであること。ただクレイモデルを作るのではなく、デザインに対して提案していける。そして実際提案 したことがいくつも反映されていて、「浅野が言ったほうがいいよな、やっぱり。」というところもあるんです。そういうやり取りを通してデザインが生み出さ れています。

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クレイの中でもシグネチャーウイングは難関ポイント。

今 回はじめて、シグネチャーウイングを採用した特徴的なフェイスになっているんですが、ここには相当こだわっています。特にライトの部分とボンネット先端の 部分のつなぎ目の接点のところがすごく複雑に作られていて、そこはクレイの中でもやはり難関ポイントでした。ここは最後の最後までもう、何度も何度もリフ レクション調整(クレイをコンマ数ミリ単位で盛ったり削ったりしながら光の通りをスムーズにする作業)をしていました。特にねじれ面。ねじれていないフ ラットな面であれば、すーっと光が通るんですけど、今回のシグネチャーウィングにからんだボンネット先端は面がねじれているものだから、普通につくると光 が綺麗に通らない。だから我々はあのねじれ面の中で、光がなめらかに通るように、立体をつくっていきました。

「魂動」デザインから生まれた新しい価値観をお客さんに提供したい。

CX- 5の「魂動」らしさは、アスリートというイメージでいうと、鍛えられた筋肉質の肩のようなフロントフェンダーや、無駄なものをそぎ落としながら後ろにねじ れていく2本のライン間の面といった場所。リアフェンダーも無駄なものを全部そぎ落として鍛えられた筋肉のような凸面の間に、優しく凹面である皮をまとっ てあげています。リアフェンダーなんて、張り感を見ていただいたら分かると思うのですが、究極にそぎ落としているんです。

「魂動」デザイン から靭(SHINARI)が生まれましたよね。靭が生まれて、勢(MINAGI)、そして雄(TAKERI)が生まれて。そういうものをお客さんが目にし たときに、マツダに新しい価値観を感じてもらえると思うんですよ。やはり、その価値観をきちんと商品として出していける企業でありたいなと思います。それ が僕たちの魂でもありますから。CX-5にはきっとそれが感じてもらえる出来になっていると思います。

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次回は、クレイモデラー阿部さんです。

お楽しみに!

カテゴリー:クルマ
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