【ニュルブルクリンク24時間レース】Mazda MX-5の新たな挑戦。「グリーンヘル」克服は一日にしてならず。
先日、こちらのブログでもご紹介しましたが、イギリスのレーシングチーム、「JOTA Sport(ジョタ・スポーツ)」と組み、2014年6月21日~22日にドイツで開催された「第42回ニュルブルクリンク24時間レース」に、Mazda MX-5(日本名:マツダ ロードスター)で初参戦しました。
ニュルブルクリンクは「グリーンヘル」の異名を持つ世界的にも有名な難コース。厳しい環境ですが、ロードスターが持つライトウェイトスポーツとしての「人馬一体」のダイナミクス性能でどこまでライバルと勝負できるか?MX-5 生誕25周年を迎える今年、この挑戦を通じて、マツダのチャレンジングスピリットや感動を皆さんにお届けしたいという想いを胸に、ニュルブルクリンク24時間レースに挑みました。今日は、レース会場に同行したスタッフのレポートをご紹介します!
舞台となるのは、ドイツ北西部にあるサーキット「ニュルブルクリンク」で開催される24時間耐久レース。「ニュルブルクリンク」は、F1も開催される約5kmのグランプリサーキットと、ノルドシュライフェと呼ばれる20km以上ある旧コースを組み合わせた超ロングコースが特徴です。レースゲームや報道などでご存知の方も多いかもしれません。
エスケープゾーンがない狭いコース幅、大小180ものコーナー、ジャンプやダウンヒル、ブラインドクレストや2km近い直線、「カルーセル(メリーゴーラウンド)」と呼ばれるバンクなどが存在する森林コースです。
また、路面の抵抗係数が場所によって異なることや、丘陵地帯特有の不安定な天候もあり、レース中にトラブルやアクシデントも多い、難コース。そのため、別名「グリーンヘル(緑の地獄)」と呼ばれています。
更にこのレースを過酷にしているのは、狭い難コース上でクラスが異なる車両が多数混走すること。今回は20クラス、165台もの台数がスターティンググリッドに並びました。世界で最も過酷なツーリングカーレースと言われるだけに、それを克服することに執念を燃やす欧州のチームやドライバーは数知れません。
ドライバーはマツダの挑戦に共感してくれた4名。日本のロードスター・パーティレースⅡのチャンピオンである加藤彰彬選手、元F1ドライバーでかつてルマンではマツダ787Bをドライブしたこともあるステファン・ヨハンソン選手(スウェーデン)、地元ドイツのツーリングカー使いとして知られるウルフガング・カウフマン選手、英国人ジャーナリストのオーエン・ミルデンホール選手の4名です。4月に参戦した予選レースやVLN(ニュルブルクリンク長距離選手権)シリーズを共に戦ったメカニックやチームクルーと24時間の過酷な戦いに挑みました。
(前列右から加藤選手、カウフマン選手、ミンデンホール選手、ヨハンソン選手)
「第42回ニュルブルクリンク24時間レース」は、6月18日にコース近隣にあるアデナウの町で行われたパレードランでスタート。各銘柄の代表車種合計30台が招待されたこのパレードには、初出場のマツダMX-5も選ばれ、市の中心にある教会前広場に設置された特設ステージで紹介を受けました。
とりわけ、地元のカウフマン選手やニュルブルクリンクに28年ぶりで戻ってきたヨハンソン選手の人気は高く、他チームのスタードライバーと比べても遜色ないほど。
翌日の19日午後に設けられた2時間のプラクティス走行後、いよいよ、4時間を超える長い公式予選にて、出場マシンと各ドライバーは、レースに出場できるレベルチェックを受けます。まずこの予選で、MX-5 195号車に最初の試練がありました。
19日午後18時45分、まだあたりの明るいうちにタイムアタックを行うことになり、トップバッターの加藤選手がコースイン。2周のウォームアップのあとのアタックラップでベストタイムを記録し、加藤選手はピットに戻ろうとしました。コントロールラインを越えて第一コーナーに向かったところ、速いマシンに囲まれてしまい、行き場を失ったMX-5はガードレールに接触してフロント部分を破損。2時間かけてフロントセクションを修復し、バンパーを交換してマシンは予選に戻りましたがその日は加藤選手と、交代したヨハンソン選手の2名だけしか予選を走れず。翌20日午前中の予選2回目に残りの2名が予選を通過する必要がありました。軽い降雨がありましたが、幸い走れないほどのウェットではなく、残り二人は義務周回を走ってようやく予選を終えることができました。ベストタイムは加藤選手が出した初日のもので、13台がエントリーしているV3クラスでは4位。これは予想以上に好位置からスタートできることを意味しており、決勝レースに期待が集まりました。
明けて21日の午後4時にレースがスタート。スタートドライバーは、ヨハンソン選手です。スター選手であるヨハンソン選手は常にメディアのカメラに囲まれ、多くのレース関係者から声がかけられます。彼は、初めてニュルに挑戦するマツダとMX-5にとってこの上ないアンバサダーですが、レースに出場している猛者達はそんなことはおかまいなしの緊迫した雰囲気です。
スタートして間もなく、無線から「誰か判らないけどリアをヒットされた!ステアリングセンターがおかしくなったけど、なんとか走れる」と叫ぶヨハンソン選手の声が聞こえました。車速の異なる車種が一斉に走るニュルでは、ことさらスタート直後は危険です。そのため、ヨハンソン選手のようなベテランが必要なのですが、そんな彼でも背後からのヒットは避けられません。
約1時間半後にピットインして加藤選手に交代すると、彼もまた別のマシンから接触を受けます。「曲がっていたステアリングセンターが元に戻った」と加藤選手。大事に至らず、ホッと胸を撫で下ろすピット一同。しかし、その後カウフマン選手がドライブ中にさらに深刻なアクシデントが起きました。やはり速いGT3マシンにリアをヒットされ、今度は更に深刻なダメージを負ってしまいます。またしてもMX-5はガレージに引き入れられ、メカニック達の奮闘が始まりました。レース完走を願う強い気持ちはメカニックもドライバーも一緒。約2時間に及ぶメカニックの必死の修復作業ののち、オーエン選手がコースに復帰しました。
しかし、ドライバー交代が一巡し、加藤選手が再びステアリングを握った深夜過ぎ、悲劇は起きました。午前2時40分、アデナウ手前のコーナーでMX-5はコースアウト。ガードレールに接触し、跳ね返って一回転しフロントから激しくクラッシュしてしまいます。レッカー車に乗せられたMX-5がパドックに戻った時、チーム関係者は皆、肩を落としました。フロント部の破損は大きく、レース中のリペアが不可能だということがはっきりしたからです。幸い、ドライブしていた加藤選手には怪我はなく、「体が突っ張っていたので手首や足が少し痛いですが、僕は大丈夫です。応援していただいた皆さんとクルマを準備してくれたチームには大変申し訳ない気持ちでいっぱいです」と語りました。
こうしてマツダモータースポーツ・チームJOTAとマツダMX-5のニュル初挑戦は手痛い洗礼の数々を受け、レース半ばで幕引きとなりました。しかし、壁は高ければ高いほど挑戦しがいがあります。この経験を次のチャレンジに活かしていきたいと思います。
MZ-Racingのサイトに、ニュルブルクリンク24時間耐久レースのレポートがありますので、こちらも是非、ご覧くださいね。
▲MZ-Racing ニュルブルクリンク特集ページ (外部サイト)
http://mzracing.jp/feature/890