MAZDA BLOG
2019.2.19

ロードスター商品改良 開発秘話:第1回「改良で目指したもの」

今年で30周年を迎えた、「マツダ ロードスター」。

このたび、公式ブログでは「30周年記念車」のベースになる2018年商品改良モデルについて、現行の「ロードスター RF」に搭載されたエンジン「SKYACTIV-G 2.0」開発の舞台裏をご紹介します。

今回は、その第1回「改良で目指したもの」です。ぜひご覧ください。

(なお、SKYACTIV-G 1.5と共通する改良技術については、「1.5L・2.0L共通」と記載しています)

 

 

SKYACTIV-G 2.0の革新への挑戦

意欲的に走る時の“感の深化”にこそドラマがある

 

2015年の発売以来、世界中で高い評価を頂いてきた4代目「マツダ ロードスター」。

2016年には従来のソフトトップモデルに加え、開閉式のハードトップモデル「マツダ ロードスター RF」をラインナップに追加。さらに2017年には走りの“質感”を向上させた、1回目の商品改良モデルを発表しました。ライトウエイトスポーツ(LWS)の志である「運転する楽しさ」を、発信し続けているクルマです。

ロードスター商品改良秘話

そして人馬一体の走りに磨きをかけるべく始まった、次の商品改良・開発。世界のLWSを牽引する存在であるべく、新たに求められた性能はガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.0」の革新的な改良による“感の深化”でした。

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開発中のSKYACTIV-G 2.0

 

既に市場で高い評価を頂いている性能を、更に高めよう。この挑戦について、ロードスタープログラムのパワートレイン開発を統括・推進した藤冨哲男(ふじとみ てつお)はこう振り返ります。

 

「2.0Lはトルクが大きい分、1.5Lのように高回転域まで回さなくても十分走る性能を元々もっています。つまり2.0Lの高回転域は、ドライバーが意欲的に走る時にのみ使われる使用頻度が低い領域です。だからこそ、あえて2.0Lの高回転域における“感の深化”に取り組むことで、新たなドラマが芽吹き、感動に育ち、また乗りたい気持ちになると私たちは考えました」。

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パワートレイン開発本部の藤冨

 

目指したのは「走っている」「操っている」というロードスターの運転する楽しさが、高回転域でも色あせるどころか、輝きを放つことをドライバーに伝えることでした。

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藤冨たちは、自分たちが考える“提供価値”を米国・欧州など海外拠点メンバーを巻き込み共創。

その結果、「ストレスなく走れる余裕感」「自分の意のままに走れるリズム感」「高回転でも伸びを感じられるワクワク感」、この3つの価値を全世界に提供しようと、目指すことになりました。

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求めたのは“どこまでも続く加速感”の実現

 

しかし、まだ見ぬ新型エンジンの実現には、馬力/トルクアップ・トルクレンジの拡大、新たなサウンドの開発など数多くのハードルを越えなければなりません。中でも高回転のレブリミットに達するまで、どこまでも加速し続けるような“伸び感”は、彼らが描く“感の深化”に欠かせない性能でした。

パフォーマンスフィールのエンジン性能開発に携わった佐々木健二(ささき けんじ)は語ります。

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パワートレイン開発本部の佐々木

 

「加速感や伸び感を体感してもらうには、加速度の強さや大きさだけでなく、加速し続けている事を示せる指標(目標)、つまり“躍度*(ヤクド)”コントロールが必要不可欠でした。

例えばエレベーターの場合、動き出しや停止する時の刺激を感じますが、動き始めると動いている感じがほとんどしません。逆に飛行機の離陸前はどんどん加速していることが分かると思います。これが躍度コントロールです。

気持ちの良い“伸び感”の実現には、飛行機が飛び立つ時のようなワクワク感が必要なのです」。

*「躍度」とは“加速度に達するまでの時間の長さ”、又は“加速度が増加したり減少したりする勢い”を表した速度の変化率のこと。マツダでは “加速している感覚”と一致する指標として扱っています。

 

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この伸び感を実現するために、必要な性能を逆算した結果、最大馬力は26馬力アップの184馬力に、最高回転数は700回転アップの7500回転にまで上げる必要があることが判明しました。

高回転域トルクの大幅アップの為なら、常に使用される低回転トルクを妥協してもいいと考えるメンバーはいません。あくまでも常用域トルクありきでの高回転化。

常用域のトルクを高めると、コーナリングにおける姿勢コントロールがアクセルだけでしやすくなり、リズミカルに走れるようになります。また、市街地のようにストップ&ゴーが続く走行シーンでは、車重が軽くなったように感じられてより扱いやすくなるのです。

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楽しさの追求はさらに深まります。

「もう矛盾していますよね。一般的に、高出力タイプのエンジンを搭載すると低回転域のトルクが低く走り出しが弱くなりがちで、逆に低速域を重視すると軽快に動くけど、高回転域までエンジンを回してもクルマは伸びがなくなる。そのどちらを選ぶかではなく、どちらも高めようというのですから」と、佐々木。

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躍度を堅持するためのエンジン性能の曲線図

 

確かに、キビキビと軽快に意のままの走りを追求するロードスターにとって、かなりの大幅改良といえる内容です。なぜ、そこまでして走りの改良にこだわったのでしょうか。

「自分が楽しいと思えるクルマじゃないと、人に楽しいとは思ってもらえないじゃないですか」佐々木は答えてくれました。

 

 

ドライバーが聞きたいサウンドのフィードバックの進化

それがパフォーマンスフィールを向上させる

 

SKYACTIV-G 2.0における進化目標は、サウンド性能にも定められました。新たな高性能エンジンにはそれに相応しい、パワフルかつクリアで伸び感のあるサウンドが必要だったのです。

改良前までは、軽やかなサウンドを志向し、音質の周波数は200~350Hzが相応しいと考えてられていました。

しかし今回は、従来とは一線を画す高性能エンジンに変わります。するとサウンドも、常用域はパワフル感を演出する、100~200Hzの低い周波数に置き換えました。

一方で、高回転域の伸び感は軽快な300~400Hzがマッチします。更にサウンドを濁らせる800Hz以上の高周波ノイズは徹底的に低減してクリアなサウンドした。

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サウンド性能の開発図(サウンドの目標は、音質と音圧の両面で設定される)

 

長年サウンド性能開発に携わる服部之総(はっとり ゆきふさ)はこう語ります。

 

「実は、“音屋”は静かなクルマを造っておけば誰からも文句を言われません。しかし、それでは乗る人を楽しませることはできないと思います。音には音に課せられた使命というものがあります。人がどう感じるか、なぜそれをいいと感じるのか。今回はその中から音の大きさに着目してフィードバックを考えました。周波数・時間的な変化率などまだまだ試すべきことはたくさん残っています」。

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車両開発でNVH性能開発に携わる服部

 

同じくサウンド性能開発の三宅昭範(みやけ あきのり)はこう語ります。

「取り組んだのは、サウンドのフィードバックの深化です。ロードノイズや風騒音などのノイズは下げて、加速する時のエンジンやマフラーの音は、よりクリアにすることを極めました」。

ロードスター商品改良秘話 ロードスター商品改良秘話
車両開発本部の三宅

 

ドライバーが聞きたい音は大きく、逆に聞きたくない音は小さくする。

この「人間を中心に据えた音のフィードバックの深化は、マツダ独特の方針でしょう」と、服部が付け加えてくれました。

 

 

初代ロードスターから受け継いだDNA

 

「SKYACTIV-G 2.0」改良のため、エンジニアたちが自らに課したミッション。理想の実現のために飽くなき挑戦を続けるパワーの源は、「自分が楽しいと思えるクルマじゃないと人に楽しいとは思ってもらえない」からに他なりません。

そして、その想いは開発が進めば進むほど、エンジニアのこだわりと共に深化を遂げます。

 

「昔のクルマ開発は、一つひとつ自分で乗りながら進めるものでした。もちろん今のクルマと性能は比べ物になりません。しかし、乗って、乗って、乗りまくって造った時代のクルマは、人が気持ち良いと感じる独特の“間”のような感覚を自然と造りこんでいた感じがします。

その証拠に今でも初代ロードスターは乗れば『クルマの原点は運転する楽しさにある』ということを気づかせてくれる。私たちが振り返る原点は、いつの時代も初代ロードスターの中にあるのです」と服部。

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どこまでも続きそうな気持ちの良い加速感と伸び感。さらなる高みへと歩を進めるパフォーマンスフィール。そして初代ロードスターから懇々と受け継がれてきた軽快な走りを2.0Lエンジンで両立させた「SKYACTIV-G 2.0」。

 

 

次回はいよいよ、エンジン開発で達成したブレークスルーに迫ります。

お楽しみに!!

ロードスター商品改良秘話

 

■ロードスターについての詳細は、下記URLをご覧ください。(マツダオフィシャルサイト)

MAZDA ROADSTER RF:https://www.mazda.co.jp/cars/roadster-rf/

MAZDA ROADSTER:https://www.mazda.co.jp/cars/roadster/

カテゴリー:クルマ
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